高橋秀之の小説 -3ページ目

高橋秀之の小説

高橋秀之の妄想小説へようこそ。
作品の内容、人物の名前等すべてフィクションです。

この物語はフィクションです。

実在するものとは一切関係ありません。



仮面夫婦【38


 (よし、池田に辿り着いたぞ)

 河村は身を乗り出すようにして、語彙を強め問い

かけた。

 「じゃあ、その時の状況を具体的に詳しく説明し

てもらおうか」

 夏川は、少し間をおいて記憶をたどりながら応え

た。

 「あの日あの女(ひと)から、書類が出来上がった

ので持って来ると連絡がありました」

 「あの女(ひと)とは、村瀬総合病院の事務員であ

る迫田真緒さんだな」

 「そうです。それで連絡するように言われていたの

で池田さんに連絡しました」

 「池田は来たのか?」

 「はい」

 「彼女と池田、どちらが先に来た?」

 「池田さんの方です」


 「二人でいるところに彼女が来たわけだな。彼女が

来てどうなった?」

 「彼女は玄関口で、謝りながら書類を僕に手渡し帰

ろうとしました。そうすと池田さんが奥から出てきて彼

女に言ったんです」

 「何と言ったんだ」

 「(それはねえだろう。あんたの所為で遅れたんだか

ら、上がってきちんと誤り説明しろよ)と言いました」

 「それで、彼女は?」

 「困ったような顔をしていたけど、(失礼します)と言っ

て部屋に上がりました。すると池田さん入り口の鍵を

かけたんです」

 「それは、おまえらの計画通りの事だろ」

 「えっ?」

 「彼女が来るって池田に連絡した時点で、おまえも計

画の実行に着手したんだろうが」            

                        《つづく》

この物語はフィクションです。

実在するものとは一切関係ありません。



仮面夫婦【37


 河村らは夏川を署まで連行して、取調べを始めた。

 「おまえは、迫田真緒さんに書類を家まで持って来

るよう強制したんやな」

 「否、その」

 「彼女が自ら持っていくとでも言うたんかいな。違う

やろ、おまえ毎日、村瀬へリハビリに通っていたんや

ろが」

 「そうですけど」

 「それやったら、村瀬に行った時に受け取ったら

いいのやろ。何か目的があったんか」

 「目的?」

 「そうや。おまえは強姦目的で部屋に引きずり込む

ため彼女に書類を持って来させたんやろ」

 「こ、来させたのは、ぼ、僕じゃない」


 (マルガイの体内には、二人の体液が残されていた。

二人の男に犯されたという事だ。一人はこの男だろう。

村瀬総合病院の橋本副院長は、この夏川と俺がマー

クしていた池田が一緒に行動していたと情報提供して

くれたから、もう一人は池田である筈だ。池田の別件

逮捕ではクロボシを食らった。汚名挽回しなけりゃな)

 

 河村は、そう考えながら質問を続けた。

 「ほぉー、じゃあ誰がしたというんだ。他に仲間がいた

のか?」

 「僕は彼女が言うように郵送でもいいと思ったけど、

連れが」

 「連れ?おまえの仕事仲間か」

 「パチンコや知り合った」

 「パチンコ仲間か、名前は何という?」

 「池田さん」

 「池田?」


 河村たちに目を向けることなく、机の上で手を動かし

ていた西枝が記録する手を止め、二人に目を向けた。

この物語はフィクションです。

実在するものとは一切関係ありません。



仮面夫婦【36


 河村と西枝の乗った車は、夏川の自宅近くで見張って

いた尾崎の乗る車の後方に着けられた。

 尾崎は車から飛び出してくると、集合住宅一階の灯りの

点いている右端の部屋を指し示し

 「夏川は先ほど戻ってきました」と言った。

 「よし、で尾崎、裏側の方はどうなっている?」

 「逃げられる可能性があります」

 「池田にワッパをはめるためには、絶対夏川を逃がす訳

にはいかん。西枝、おまえ裏側に回れ」

 西枝は、河村に言われるとすぐ夏川の住む集合住宅の

裏側に向かった。


 河村は、尾崎とともに夏川の部屋の前に立った。

 「夏川さん」

 尾崎が、ドアをノックして声をかけた。

 「はい」

 「宅急便です」

 開錠する音が聞こえ、ドアが少し開いた。

 河村は、開いたドアの内側に足を差込み閉じられないよ

うにして言った。

 「警察や、開けんかい。なんで来たか分かるやろ」

 「いいえ」


 夏川が、怯えた表情で答えた。

 「おまえ、北区にある村瀬総合病院の迫田真緒という

事務のお姉さん知ってるやろ」

 「えっ?」

 「ちょっと警察まで一緒に来てくれるか」

 「着替えてよろしいか?」

 「ええで」

 夏川は、奥へ引っ込んだ。

 「ん?尾崎裏へ回れ。西枝、夏川がそっちへ言ったぞ」

 河村は、靴を履いたまま部屋に上がり奥に進んだ。

 夏川が、裸足のまま集合住宅の裏側に飛び出してきた。

 「はい、待ってましたぜ」

 西枝は、そう言いながら夏川の前に立ちはだかった。

 そこへ、尾崎が応援に回ってきた。

 夏川は、慌てて踵を返し部屋に戻ろうとしたが、部屋を

通り抜けて来た河村が怒鳴り声をあげた。

 「こらぁ、逃がさへんぞ」

 夏川は腰が抜けたように、その場に座り込んだ。

この物語はフィクションです。

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仮面夫婦【35


※大阪府警旭警察署※

 

 河村と西枝両刑事が署に戻ると、目ざとく二人に気づいた

井戸刑事課長が待ち構えていたように言った。

 「池田を見失っていないだろうな」

 「その点は大丈夫です。森本に張らせていますから」

 「で、正式な札(ふだ)を取って、まだ引っ張れないのか?」

 「ガイシャとの接点になる夏川が行方を晦ましているもので」

 「夏川への張り込みは」

 「尾崎は張っています」

 井戸は小さく溜息をついたあと、質問を続けた。

 「例の別件の件だが、奴はアリバイとなった人妻を意識失わ

ホテルに連れ込んでいるんだろう」

 「そういうことです」

 「それで、もう一度引っ張ったらどうだ」

 「それは無理ですよ。親告罪ですから」

 「だから、そこは本人に頼んで」


 そこへ河村の携帯に、夏川を張っている尾崎から連絡が入っ

た。

 「河村だ、どうした?」

 (夏川が,いま家にもどりました)

 「よし、すぐ行く。おい西枝行くぞ」

 河村は、西枝を連れ井戸課長の前から逃げるように去った。

この物語はフィクションです。

実在するものとは一切関係ありません。



仮面夫婦【34



 倫子は高村優美の言うことを鵜呑みにして、抱き始めて

いた夫に女がいるのではないかという疑念が晴れたわけ

ではなかった。

 それよりも今、自分自身の問題で恐怖を感じていた。

 どこで無くしたか定かではないが、運転免許証を拾って

くれた人物に不覚にも犯されてしまったことだ。

 病院長の一人娘として生まれ育った、所謂お嬢様の倫

子にとって今まで接した事などない部類の男だ。

 相手は、倫子の住所も名前も知り調べて電話番号も知

っている。

 もう既に、どういう立場の者かも調べられているだろう。

 今度は、この前の事をネタにお金を強請られるかも知れ

ない。

 否それよりも、体目当てに呼び出されるかも知れない。

 倫子は、夫に大きな隠し事をしてしまった、と思った。


 優美が帰った後、倫子は近くの実家に行った。

 「おー、倫子か」

 『あら、お父様いらしたんですか』

 父の村瀬徹は、休日にはゴルフや学会、医師会の集まり

に出かける事が多いのに、珍しく今日は家にいた。

 「最近は、院内の事はもとより病院として外部と対応しなけ

ればならない事は直樹くんに任せる事ができ楽させて貰って

いるよ。これも倫子のお陰だな」

 『わたしのって?』

 「決まっているじゃないか、倫子が直樹くんと結婚してくれた

事だよ。整形外科医なら総合病院としての村瀬を任せる事が

出来る」

 『ちょっと待ってよ、お父さん、そんな年寄りじみた話を

 「勿論まだ先のことだが、安心だということだ。それより直樹

くんと仲良くやっているか。わがまま言い過ぎて逃げられない

様にしないとな。それにどうだ倫子、子供は未だか?直樹くん

は精力的だから励んでくれていると思うが」

 『お父様たら、あー、お母さんはいるかしら』

 「奥にいるだろう」

 倫子は、話を逸らせて父の側を離れた。