この物語はフィクションです。
実在するものとは一切関係ありません。
仮面夫婦【38】
(よし、池田に辿り着いたぞ)
河村は身を乗り出すようにして、語彙を強め問い
かけた。
「じゃあ、その時の状況を具体的に詳しく説明し
てもらおうか」
夏川は、少し間をおいて記憶をたどりながら応え
た。
「あの日あの女(ひと)から、書類が出来上がった
ので持って来ると連絡がありました」
「あの女(ひと)とは、村瀬総合病院の事務員であ
る迫田真緒さんだな」
「そうです。それで連絡するように言われていたの
で池田さんに連絡しました」
「池田は来たのか?」
「はい」
「彼女と池田、どちらが先に来た?」
「池田さんの方です」
「二人でいるところに彼女が来たわけだな。彼女が
来てどうなった?」
「彼女は玄関口で、謝りながら書類を僕に手渡し帰
ろうとしました。そうすと池田さんが奥から出てきて彼
女に言ったんです」
「何と言ったんだ」
「(それはねえだろう。あんたの所為で遅れたんだか
ら、上がってきちんと誤り説明しろよ)と言いました」
「それで、彼女は?」
「困ったような顔をしていたけど、(失礼します)と言っ
て部屋に上がりました。すると池田さん入り口の鍵を
かけたんです」
「それは、おまえらの計画通りの事だろ」
「えっ?」
「彼女が来るって池田に連絡した時点で、おまえも計
画の実行に着手したんだろうが」
《つづく》