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高橋秀之の小説

高橋秀之の妄想小説へようこそ。
作品の内容、人物の名前等すべてフィクションです。

この物語はフィクションで

実在する人物・団体等とは一切関係ありません。


ホスピタリティ・おもてなしの心【28】


 7月23日から白良浜で、花火フェスティバルの行なわれる7月30日、踊りの

8月1日、花火大会の8月10日を除いて、メッセージ花火が始まった。

 志穂も個人的に、全国のみなさん、海水浴と温泉、新鮮な海の幸を求め白浜

温泉に来てください、とメッセージ花火を打ち上げた。

    本当は、ホテル・ブルービーチ白浜にお泊りください、と言いたかったのだ

    けど。先ずは、この白浜に一人でも多くのお客さんが訪れてくださる事よね


 また、7月23日から10月まで、当然の事として花火フェスティバルの日は除か

れるが、毎週土曜日の夜、キャンドルイルミネーションが始まった。

 2011年にちなんで、2011本のイルミネーションが点される。


 その日も志穂は忙しく動き回り、当直者に後を任せ帰宅する為に車に乗り込み

駐車場から出ようとしたときに、それを遮るかのように一台の他府県ナンバーの

ワンボックスカーが停められた。

    何よ、この車、危ないじゃないの。うちの宿泊者ではないわね。でも他府県

    ナンバーの車だから、こちらの方へ遊びに来られた方ね


 ワンボックスカーの、助手席から一人の男が降りてきて

 「すみません、ちょっと道を教えて貰いたくって」と声をかける。

 志穂は、白浜へ遊びに来てくださった方だから、と笑顔で

 『何処へ行かれるのかしら?』と訊いた。

 男は

 「何処だったけな」と言いながら、後部座席のスライドドアーを開ける。

 後部座席にも、一人の男が乗っていて、何か白い紙を広げ

 「これ、何て読むんだ」とか言っている。

 志穂は

    仕方がないわね、と思いながら車から出て、ワンボックスカーに近づき

    後部座席の男の手にしている紙を覗き込んだ。


 そのとき、背中から物凄い力が志穂を車内に押し込むように加えられ、、志穂は

思わず後部座席の男の方へ体を突っ込ませた。

 同時に、後部座席の男の手が志穂の上半身を車内に引き入れようとした。

 そこへ、外にいる男が志穂の下半身を持ち上げ車内に押し込んだ。

 志穂が大声を出す間もなく、一瞬の内に社中の人となりドアーは閉じられ、何事

も無かったように、ワンボックスカーはその場を離れた。

 『や、やめてください、あなたたちは何をするんです。誰なんです』

 車内で男に羽交い絞めにされながら、志穂は必死に抵抗しようとする。

 「女将さんよ、暴れちゃ顔に傷がつくぜ」

 後部座席に乗っていた、志穂を羽交い絞めにしている男が、志穂の頬に何かを

押し付ける。

 志穂の下半身を持ち上げ車に押し込んだ男が言った。

 「女将って、いうから、どんなババアーか、おばはんかと思っていたら、若くて上玉

じゃないかよ」と言いながら、志穂のスカートの中に手を滑り込ませてきた。

    この人たちは、わたしがだれだか知っている、一体誰?何のために?

 

 

この物語はフィクションで

実在する人物・団体等とは一切関係ありません。


ホスピタリティ・おもてなしの心【27】


 夏休みに入っても、金曜、土曜は例年に近い数の家族連れ客で予約を確保

出来たが、平日は少し伸び悩んでいる。

 志穂は、午後のミーティングを終えた後支配人の井田を呼んで話し合った。

 『支配人、本来ならば女のわたしの方が適任でしょうけど、わたしは未だ若く

て未熟、メイドさんたちの間でいざこざが生じないよう気配りしてほしいの』

 「何か、ありましたか?」

 『いいえ、わたしは何も気づいてはいないけど。この時期、事が起こってからで

は遅いでしょう』

 「なるほど、まあ、わたしの耳に少し入っている情報もありますので、心得てお

きます」

 『助かるわ、御願いします』

 「で、秩序を損なうような人物には、この際辞めていただきますかな」

 『えっ、それはちょっと待って、人にはそれぞれ長所も短所もあるわ。問題のあ

る人にも、その人の長所がホテルに貢献してくれていると思うの』

 「でも、女将さん、問題の芽は小さいうちに摘んでおくほうが良いと思いますよ」

 『じゃあ、支配人、この様にしましょう。もし、支配人の目からご覧なって問題が

あると感じる人物がいれば、二人で相談しましょう』

 「分かりました」

 支配人が退室して、暫くすると営業部長の中沢圭吾が訪ねてきた。


 「唐沢女将、ちょっといいですかな」

 『中沢部長、お疲れ様です。どうぞ』

 志穂が、応接ソファーへの着席を勧め、腰を降ろした中沢に問いかけた。

 『中沢さん、改まって何か?』

 「9月の事なんですが、海南の方のある会社の全国幹部会議を取れそうなんで

す」

 『えっ、9月に?』

 「そうです。例年、10月になると色んな団体旅行がありますが、9月は夏休みが

終わったあと少し閑散とします。その時に確保できそうです」

 『まあ、助かりますわ。営業部長、ご苦労様です』

 「それで、と言っては何ですが、事前の詰めの打ち合わせに女将さんも同席願い

たいのですが」

 『勿論、出させていただきますよ。幹事の方に泊っていただくのでしょう?』

 「いいえ、こちらから幹事さんの集まりの場に出向かせていただきます」

 『えっ?こちらから?ああー、良いですよ。で、いつですか?』

 志穂は、机の横へ手帳を取りに行き開いて中沢の顔を見つめた。

 「女将も、お忙しいでしょうから。白浜花火フェスティバルが終わってからにしま

しょうか」

 『花火フェスティバルが終わってから?じゃあ、8月に入ってですね』

 「そうなるかと思います。でも天気予報じゃ今月末は曇り気味で雨が降らなけれ

ばいいが」

 『今年は、どうなるの?順延?幹事の方たちに事前に止まって頂いて、メッセージ

花火をご覧になっていただければよいのに』

 志穂は、そう言ってまた中沢を見つめた。

 中沢は、その視線を逸らし立ち上がり

 「では、先方と打ち合わせの段取りが整い次第、女将に連絡します」

 『はい、よろしくお願いします』

 中沢は、志穂に背中を向け、ニヤリとほくそ笑みながら退室した。

この物語はフィクションで

実在する人物・団体等とは一切関係ありません。


ホスピタリティ・おもてなしの心【26】


 志穂がフロントに向かって従業員通路を歩いて行くと、前から岩谷裕樹が

歩いてくるのが見えた。

    今のわたしにとって、彼が一番安らぎを与えてくれるわ


 そう思い自然と心が和む志穂だったが、連れの女性がいることに気づき、

そしてその」女性の顔に目が釘付けになった。

     中村さん?


 志穂の傍まで来た裕樹は、志穂の表情に気づき笑いながら言った。

 「似ているでしょう。でも裕美じゃありませんよ」

 『じゃあ、お姉さんか妹さん?』

 「赤の他人で、僕の同僚なんです。彼女は、友達が勝浦温泉にいて、そこ

を訪ねての帰りなんです」

 古沢逸美がトイレに行っている間に、志穂は裕樹に問いかけた。

 『あの子は岩谷くんの彼女?今回は、そういう行動だったの?』

 裕樹は、手を横に振りながら答えた。

 「どっちも違いますよ。彼女が、たまたま近くに来ていたというだけで」

 『でも白浜駅から大阪まで同じ電車で帰るのでしょう?まあ、良いわ。

仮に岩谷くんが、彼女とカップルで来るというのなら、それでも良い、わたし

を助ける為のこのホテルに戻ってきて』

 「古沢、彼女、古沢っていう名前なんですけど、古沢のことは別にして、

来週の休みに俺はもう一度、唐沢さんに会いに来ますよ」

 『本当?本当に、約束よ』

 志穂は、そういうと幼子の様に小指を裕樹の小指を絡ませた。

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ホスピタリティ・おもてなしの心【25】


 光り輝く星空を見上げている岩谷裕樹の肩に、志穂が頭を傾け乗せてきた。

 潮の香りを打ち消すかのように、ふぁーっと心地よい志穂が放つ香織が裕樹

の鼻をくすぐった。

    そういえば以前、裕美とこの様に星空を二人して眺めていた事があった

    なあ、と裕樹が思いにふけていると

 打ち破るかの様に、志穂の声が弘樹の耳に問いかけてきた

 『岩谷くん、いま何を考えている?』

 「えっ?」

 『岩谷くんって、わたしのような年上の女性は嫌い?』

 弘樹は、少し間をおいて答えた。

 「そんなことは、ないっすよ。いま野球選手と年上のアナウンサーの交際や結

婚がはやっていますからね」

 『上手いこと言うわね。じゃあ岩谷くんが野球選手で、わたしがアナウンサー?

うふふ、でも、そう答えるまでに少し時間がかかっていた様だけど、中村さんの

事を考えた?まあ、いいっか』

 裕樹は、無言で志穂を見詰めた。

 志穂は、その視線を見つめ言った。

 『こうして、あなたと二人でいると気が休まるわ。安心して気を許せるから。岩谷

くん、今晩、わたしの部屋に泊りなさいよ。ねえ、そうしよう』

 裕樹は、明るくそう言う志穂の顔を見つめ

     俺って、逸美は別として、裕美や浜田支配人、唐沢さん、と、年上の女

     と縁があるのかな、と考えた。



 翌日午後3時ごろ、メイドの藤野が少しいつもより早い目に出てきて、宴会配膳

の段取りを考えていると、不意に後ろから声をかけられた。

 『おはようございます。藤野さん』

 『あっ、女将さん、おはようございます』

 『藤野さんは、いつも誰よりも早く出てきて段取りしてくださっているから、そつ

なく宴会が進行して助かっているわ。』

 『やだあ、女将さん、そんな言い方』

 『宴会場の方は、安心して藤野さんに任せておけるもの。ただ、他の人に至らな

い点があっても大目に見てあげてね』

 藤野の表情がさっと曇った。

 『えっ、女将さん、誰かが女将さんに何かちくったんですか』

 『そんな事なにもないわ。ただ、わたしの方から見ていて、藤野さんの方が大変

だろうと思って』

 『女将さん、そんな回りくどいことを言っておらずに、はっきり言ってくださいよ。誰

某が、わたしのことをどうとかこうとか言っているというように』

 『そんな事はないわよ。じゃあ、いま言った事は撤回するわ。忘れて頂戴。今日も

よろしくお願いね』

 そこへ、次々とメイドさんたちが出勤してきて、志穂はそこを離れた。


 須川茜は、出勤してきて藤野の顔の表情を見ると直ぐに

    今日は、何か機嫌が悪そうだわ、触らぬ神にたたりなしか、と考え挨拶だけ

    を交わして、少し離れた位置にいようと思った。

 藤野は、案の定、須川の挨拶に答え応じる事もなく配膳室墨のゴミ箱を蹴っ飛ば

した。

 『藤野さん、どうされたんですか?』

 『生意気な女だよ。何様だと思っているんだい。女将気取りで』

 『女将気取りって、唐沢の女将さんですか』

 『そうだよ』

 『でも、唐沢さんは、女将さんでしょう、雇われといっても』

 『須川さん、知らないのかい。あの女、フロントにいたときから、社長に裸をさらして

今の座を築いたんじゃないか。あの女、一度痛い目に遭わせてやらなければね』

 茜は、藤野の形相を見てゾッとした。

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実在する人物・団体等とは一切関係ありません。


ホスピタリティ・おもてなしの心【24】


 志穂が、茜を役員室から送り出した後、その日の当直者に後を託しホテルから

外に出ると、田島らと別れてきた岩谷とバッタリ会った。

 『岩谷くん』

 志穂は、想像もしていなかった人物に会い驚きの声をあげた。

 「唐沢主任、否いまは女将さんでしたね」

 『唐沢で良いわよ。それより岩谷くん一体どうしたの?』

 「二日間休みが取れたので、裕美のお墓参りに」

 『そうだったの。で、今日はどこかに泊るの?』

 「民宿にでも、って思っています」

 『うちのホテルに泊ってくれれば良いのに』

 「否、知らないところに泊る方が」

 『そっか、そんなものかな。ねえ、時間があるのなら少し白良浜を歩いてみない?』

 「そんな、俺なんかとそんな事をすると長谷川社長に怒られますよ」

 志穂は、うふっと小さく声を発した後、寂しげに

 『彼とは別れたわ。と、いうか逃げられたのよ。オーナーが亡くなった時に、彼はオー

ナーの受けは良かったけれど奥さんの受けは良くなかったでしょう。営業部長の方が

オーナー婦人の受けが良かったから、身を案じてオーナー婦人の受けが良かった大野

香織さんに乗り換えたってわけ』

 「ふ~ん、相変わらずいろんなことがあるんすね」

 志穂は、岩谷の顔を見つめながら笑みを浮かべ、岩谷の返事を待たず白良浜の方に

足を向けた。

 岩谷も少し遅れ後に続いた。


 白良浜の砂浜を歩き出すと、志穂は岩谷に寄り添い腕を絡ませてきた。

 『こんなところを中村さんに見られたら、怒られるかな』と誰に聞かせるともなく言い空

を見上げ星を見つめた。

 岩谷は、どう答えて良いか分からず戸惑っていた。

 『ねえ、岩谷くん、ホテルに戻ってきてくれない?』

 「えっ?」

 『わたしには信頼できる支えが必要だわ』

 「でも、ホテルには、長谷川さんや営業部長など多くの優秀な方がいるでしょう」

 『勿論、ホテルは自分独りで運営できるものでないわよ。みんなと相談して取り決めて

やっていく。しかし彼らは、わたしがつまづき失敗して倒れるのを待っているわ』

 志穂は、そう言って岩谷の顔を覗き込むようにして見つめた。