高橋秀之の小説 -14ページ目

高橋秀之の小説

高橋秀之の妄想小説へようこそ。
作品の内容、人物の名前等すべてフィクションです。

この物語はフィクションで

実在する人物・団体等とは一切関係ありません。


ホスピタリティ・おもてなしの心【48】


 『そんなの駄目よ』

 麻耶は、子供に諭すようにやんわり言いながらも力強く裕樹を押し放した。

 『断っておくけど、昨日も、それより以前も、岩谷くんが想像しているような

ことはないわよ。でもショックだわね、あなたがわたしをそんな風に見ていた

なんて』

 麻耶は、そう言って裕樹を見つめた。

 裕樹は、その視線から目を逸らし、しかし力強く言った。

 「そ、そんなの、支配人、麻耶さんが悪いんです。僕のことを無視して部長

と、あんな時間にあのような場所で会っているのですから、想像もします」

 『わたしは、そんな軽い女じゃないわ。それより早くシャワーを浴びさせて』


 麻耶は、そう言いながら浴室の方へ足を向けた。

 裕樹は、後ろから麻耶に抱きつき胸を鷲づかみにした。

 『いや』

 顔を裕樹の方に向けた、麻耶の唇を裕樹は口で塞いだ。


 二人は、ベッドに横たわっていた。

 裕樹は、添乗を見つめ呟くように言い、麻耶は裕樹の横顔を見つめ訊いて

いる。

 「僕は、不安なんです。迷っているんです」

 『何が不安なの?何を迷っているの?』

 「以前いた白浜のホテルの女将に戻ってこないかって」

 『それで、戻るの?今日この様になってしまったけれど、あなたを無理に

縛らないわ』

 そう言うと、麻耶は裕樹に体を寄せた。

 裕樹は、それに応えるように再び麻耶を抱きしめた。

 「僕は、麻耶さんと離れたくない。でも、ここのホテルでは、女性体制だから

いつまで経っても、どんなに頑張っても今のままの状態です」

 『確かにそうね。白浜のホテルじゃ、あなたの様に出来の良い子は、上が

馬鹿じゃない限り相応しいポストまで上っていけるんでしょうね』

 麻耶は、そう言うと天井を見つめ何か考え出した。

この物語はフィクションで

実在する人物・団体等とは一切関係ありません。


ホスピタリティ・おもてなしの心【47】


 裕樹は、麻耶から古谷逸美との事を訊かれ先ほど以上に大きく首を

横に振った。

 『どうして?』

 麻耶は、不思議そうな表情で裕樹を見つめ言葉を続けた。

 『あなたにとって、理想の女性であった裕美さんにそっくりで良いんじ

ゃないの』

 「だからこそ、余計に困るんです。似ているといっても古谷さんは古谷

さんで、裕美ではないのです。裕美と同じようなことを求めても、無理な

ものは無理なんです。仮に古谷さんに好意を抱き始めても本当に好意

抱いているのかどうかも自分でも分からないと思う」


 裕樹は、逸美との事を麻耶に誤解されないようにと必死になって説明

した。

 麻耶は、裕樹と逸美との事について、それ以上問い質すことなく、話の

矛先を別の方向に進めた。

 『西垣内さゆり(にしがいどさゆり)とは、どうなってるの?』

 「えっ?」

 『あなたの上司である、ホテル都倉大阪北の支配人よ。一緒に寝てい

るところを裕美さんに目撃されたのでしょう』

 裕樹にとって、穿り返されたくない耳の痛い話を麻耶は突きつけてきた。


 「あれは誤解ですって、何もありませんから」

 『何もないっていっても、素っ裸ではなかったにしても、あなたたちは下着

姿で一つの布団の中に入っていたのでしょう』

 「僕は、何も覚えてはいない。知らない」

 『男性って、みな都合が悪くなるとそう言うのよね。岩谷くんも、その辺り

は同じか』

 裕樹は、首を横に大きく振りながら

 「違う、違うって。じゃあ支配人は、どうなんです。昨夜あれから・・」と

最後の方は上擦った声で言った。

 『何度同じ事を言わせるつもり。それより、どうしてそんな事を岩谷くん

に答えなければいけないの

 「ぼ、僕は支配人が好きなんです」

 裕樹は、そう言うと麻耶にしがみ付いた。

この物語はフィクションで

実在する人物・団体等とは一切関係ありません。


ホスピタリティ・おもてなしの心【46】


 『どうしたの?岩谷くん』

 麻耶は、あしらうように言って裕樹を見た。

 「好きなんです。支配人のことが」

 『一時的な寛恕に駆られているだけよ』

 「やはり僕なんかには興味ないですか?都倉部長の方がいいですか」

 『都倉部長?どうして部長のことが出てくるの?』

 「昨夜、部長と一緒でしたね」

 『昨夜?わたしをつけていたの』

 「違う。たまたまホテルの前を通ったら、先ず部長が、暫くすると支配人

が」


 麻耶は、宙を仰いだあと

 『ラウンジで仕事の打ち合わせをしただけよ』と言った。

 裕樹は、麻耶を見つめた。

 麻耶は、その視線を避けることなく

 『岩谷くんのことは、嫌いじゃないわ。でも、あなたはまだ若い。物足り

ないって言っているのじゃないのよ。わたしの様な年上ではなく、もっと

相応しい人がいるわ』と言った。

 裕樹は、首を横に振った。

 『聞き分けのない子ね。それより、逸美ちゃん、古谷さんとは、どうなって

いるの?』

この物語はフィクションで

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ホスピタリティ・おもてなしの心【45】


 裕樹と麻耶を乗せたタクシーが、麻耶の住むマンション方面に向かって

走り出し暫くすると、朝から天気予報で報じられていた通りに雨が降り出し

てきた。

 マンションの前へ着いた頃には、土砂降りの雨になり稲光と共に雷が大

な音をたてていた。

 タクシーから降りてマンションに駆け込もうとしているときに、激しく光って

大きな音がした。

 『キャー』

 麻耶が、叫び声をあげ裕樹にしがみついてきた。

 「大丈夫ですよ支配人」

 裕樹は、そう言って麻耶の手を引きマンションに駆け込んだ。


 部屋の前まで来ると、麻耶は鍵を開けながら

 『笑わないでね。散らかっていると思うの』と、呟くように言った。

 裕樹は、麻耶に続き部屋に入った。

 いい香りがした。

 広いリビングのある1LDKの部屋だ。

 裕樹は、リビングをさりげなく眺めた。

 麻耶は、散らかしているの、と言ったが、あの綺麗好きだった裕美の部屋

同様に片付けられてある。


 『何をキョロキョロ眺めているの?濡れてしまったわね、これで拭いて』

 麻耶は、そう言いながらバスタオルを裕樹に手渡した。

 『わたし、先にシャワー浴びさせてね』

 麻耶は、バスルームに向かった。

 裕樹は、その麻耶の背中を見た。

 雨で濡れた白いブラウスに、ブラとキャミソールの肩紐が見える。

 裕樹は、衝動に駆られ麻耶の背中に抱きついた。

 


この物語はフィクションで

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ホスピタリティ・おもてなしの心【44】


 浜田麻耶と岩谷裕樹は、宿泊客へのサービス朝食を調理する係員が

作ってくれた昼食を事務所で食べていた。

 「僕の研修は、大阪地区だけですよね」

 裕樹は、食べ物を頬張り言いにくそうに問いかけた。

 『そうでしょうね。だって基本的な骨組みは変えないって、部長は仰って

いたから』

 裕樹は、麻耶の顔を見つめながら訊いていたが、麻耶の口から都倉部長

のことが出て、また昨夜の光景を思い出した。

  一緒に出ると誤解を招くから、との麻耶の言葉通り裕樹は、麻耶とは

別にホテルを出て歩き出した。

 『岩谷くん、待ってよ』

 麻耶が、息を切らせ小走りに駆け追いついてきた。

 その声に気づいて振り返り立ち止まった裕樹に

 『込み入った話になるんでしょう。わたしの部屋に来ない、部屋で飲もう』

と一気に言った。

 「えっ、いいんですか」

 『そのかわり、散らかっているわよ。笑わないで』

 麻耶は、そう言うとタクシーを拾うため手をあげた。