この物語はフィクションで
実在する人物・団体等とは一切関係ありません。
ホスピタリティ・おもてなしの心【59】
どう答えて良いのか戸惑っている麻耶に、一樹の声が突き刺さってきた。
「浜田支配人には彼は何も?」
『わたしには何も。部長は、わたしなんかには』
「そんな事はないでしょう。彼が理想とするようなタイプ、いや、誤解しない
でください。こんな事をいうと僕もセクハラだと言われますな。何もないのな
ら良かった。我社のように女性従業員をメインにしている企業にとって彼の
ような破廉恥な行状は重要問題です」
『で、部長は、この大阪地区でもその様なことを』
「勿論です。名前は公表出来ませんがね」
麻耶は、少し間をおいて答えた。
『気がつきませんでした』
そう答えた麻耶の顔を見つめながら、一樹は言った。
「それでは困りますね」
『えっ?』
「確かに、浜田支配人率いる館からは声は上がっていません。しかし本社
としては、浜田支配人には大阪地区を、先にはもっと広範囲の地域の管理
をも御願いしたいと思っているんです」
『わたしなんかには無理です』
「そんな事ないでしょう。皮肉なことに、これは哲也も言っていたことです」
『でも、そういう業務は、やはり男性の方が』
「いま、その様な人材が確保できないんだ」
『直ぐには無理かもしれませんが、そういう方向で一人の人物を育てて頂
けませんか』
「育てる?その人物は、うちの従業員ですか?」
『西垣内支配人の下にいる、岩谷裕樹です』
「岩谷裕樹?僕には名前からどんな人物か分かりませんが、まだ若すぎる
でしょう」