「銀髪」 | 小劇場クルーズ~この素晴らしき役者たち~

小劇場クルーズ~この素晴らしき役者たち~

最も身近で自由な表現方法である筈の演劇なのに、ごく一部の人々がその恩恵に浴しているだけの現状はとても寂しい。
人知れず才能と輝きを秘めた役者や深い感動をもたらす舞台が、星の瞬きのように次々と光っては消えを繰り返し永遠に忘れられるでは、本当に勿体ない。

 

アマヤドリ「銀髪」(於:下北沢・本多劇場、本日千穐楽)を観てきました。

 

大晦日の夜、脱サラして路頭に迷う維康(コレヤス)は、屋台のラーメン屋に突然あらわれた怪しげな男達に拉致される。その日から彼は、退屈な日常にささやかな混乱と不安をお届けするパニック専門のベンチャー企業「踝(くるぶし)コンドル」の一員となった。元帥・船場種吉(センバタネキチ)を中心にビジネスを展開する彼らは、様々な形式でパニックを売りさばき、やがて国民的支持を得て巨大企業へとのし上がっていった。苛烈な反対運動にも関わらず次第にエスカレートしていく狂乱の中、ついに彼らの社運を賭けた一大イベント、「ノストラドン」が始動する——。
                                                 ~説明文より~

 

 

劇団創立十五周年記念の三本立てのラストとなるこの作品は、前身の「ひょっとこ乱舞」時代の代表作の再演-

最終公演であり、集大成となった作品『うれしい悲鳴』から嵌っている身にとってこれは有難い企画。

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ホール公演には似つかわしくない、過激なワードの羅列と火花を散らしシャウトする早いテンポの台詞、暗めの照明、祝祭的で民族舞踊を取り入れたような群舞-

そして、妖しくきな臭い反社会的な香りと諦観が支配する刹那的でパンクな痛さ加減がどこか郷愁を誘う。

破滅型近未来ダークファンタジー的な荒唐無稽な話しを最後は生命の誕生や大自然に対する畏敬を込めた壮大な物語として、粗さの中にもセンス良く仕立てあげた舞台。

 

・・・泣けた。

 

今回、危うい病的なカリスマを振り切った演技で見事に演じた、主演の倉田大輔さん

この劇団は、いい役者が沢山揃っていますね。