◯前に、ブログ『本薬師寺跡』で、次の万葉歌碑を見付けた。
わすれ草わが紐に付く香具山の故りにし里を忘れむがため
大伴旅人
わすれ草を自分の紐につける。香具山のあたりの
あの懐かしい故郷をひとときでもわすれるために。
という意味です。
◯『藤原京朱雀大路跡』の先、別所池の畔にも、次の万葉歌碑が存在した。
◯旅人の、
わすれ草わが紐に付く香具山の故りにし里を忘れむがため
もなかなか良い和歌だが、この、
藤原の古りにし里の秋萩は咲きて散りにき君待ちかねて
和歌も風情のある歌である。こういう歌碑が、さり気なく、溜池の畦道の木のもとに建っている。それがまた何とも風流である。こういう歌碑を黙って見過ごすことはできない。
◯インターネットで検索すると、次のページがヒットした。
万葉歌碑データベース
藤原の古りにし里の秋萩は咲きて散りにき君待ちかねて
和銅三(710)年、都が藤原京から平城京へ遷されました。「藤原の 古りにし里」とありますので、平城遷都後の、旧都となった藤原京跡の様子を詠んでいることがわかります。
旧都・藤原京の萩の花はもう咲いて散ってしまいました、あなたのお越しを待ちかねて、という歌意になります。「花に寄す」という題の通り、相手が来るのを待ちかねて散る萩花の様子は、作者の心情を反映しています。作者は旧都におり、新都に移り住んだ男性がなかなか自分の元を訪ねて来ないことを嘆いているのでしょう。
この歌碑は、橿原市別所町にある別所池のほとりにたっています。かつて藤原宮があったとされるあたりです。揮毫者は、歴史小説作家として有名な司馬遼太郎氏です。『竜馬がゆく』『燃えよ剣』など多くの著作があります。