体操のはじまり、その愉しさ
〔絵本のさんぽみち〕

「あかちゃん たいそう」(鈴木まもる・文・絵。小峰書店)という絵本を手にしてみた。赤ちゃんの体操? どんな体操なんだろう? すぐ目に浮かんだのは、母親が寝ている赤ちゃんの手や足を揺らしたり、回していたりする場面だった。しかし、表紙を見るとどうやら違う。いったい、どんな赤ちゃん体操なんだろう。
1ページ目。「ねこさんと ほっぺと ほっぺ すり すり すり」 ネコと頬をスリスリしている子ども。ネコの頬毛のこそばゆさと温もりが伝わってくる。

2ページ目。「ぞうさんと おはなと おはな くん くん くん」 鼻をすり合わせる相手はゾウ。ゾウと言ったら真っ先に長い鼻を思い浮かべる。そんなゾウの鼻とくっつき合わすと、自分の鼻も長くなるようで面白い。

3ページ目。「いぬさんと てと てを つないで あ・く・しゅ」 手と手をつなぎ合わせる相手はイヌ。「お手」するイヌは相手を信頼している。「あ・く・しゅ」は、信頼のしるしだ。
ここまでページをめくって、頬(ネコ)、鼻(ゾウ)、手(イヌ)と、体操する相手がうってつけであると思う。ペアになる相手への想像力がかき立てられて、愉しくなってくる。
それなら、次はどうだろう。まだ体操していない自分のからだの部分と、相手になって登場する動物はなんだろう? そう思って、次のページをめくってみる。すると、……
4ページ目。足と足を踏み合わせる相手はウサギ。「あしと あしとで キック キック キック」
ウサギの足は長くて強いぞ、ソレッ。5ページ目。背中と背中をこすり合わせる相手はクマ。大きくてどっしりしたクマの背中。押し返せ! 6ページ目。お尻とお尻を突き合わせる相手はブタ。相手にとって不足なし。

「あかちゃん たいそう」の相手の選び方が絶妙だ。彼らと触れ合う想像が自分に跳ね返ってきて、体操がとても楽しくなる。
絵本「あかちゃん たいそう」は、さらに進む。
フクロウも登場。その隣で想像力を働かせて、パタパタ、飛ぶ真似をする。アライグマなどは、こちょこちょ、くすぐってくる。お父さんは大きな山だ。ヨイショ、ヨイショと登る。
最後は……お母さんだ。ぎゅ~っ。お母さんは子を抱きしめる。子はお母さんに抱きつく。……これも体操? そう、体操。
絵本「あかちゃん たいそう」は、自分の「からだ」がこんなに豊かであり、開かれていることを示している。『体操』とは、本来そういう《愉しさ》のなかにある。そんなことを感じさせてくれる絵本に出会った。
