野に出て遊ぶ ② 〔暮らしのさんぽみち〕

虫取りは、自然発生的に始まった。ホクホクの顔をして帰って来て、しまってあった昆虫図鑑を二人して開いて、なんだかんだと話している。「アッ、これって○○蝶だ」「これ、オニヤンマに似ているけど、違うんだ」 図鑑から知識を吸収していく速度と密度が、スゴい。

魚つかみは、こちらから持ちかけた。2Lペットボトルの底に切れ目を入れて魚道を作り、中に金魚のエサを入れて小川の淵にうまく沈めておく。即席の魚篭(びく)だ。ここまでは二人とも実感が湧かなかったようだが、翌日見に行くとペットボトルの中で動いているものがある。「アッ、入ってる!」 Kが身を乗り出して小川の中に入らんとする。手を取り、岩の上に乗せさせて魚篭を一緒に取り出す。「ワァッ」 ドジョウ、沢ガニ、小さいハヤ、魚篭の中が騒がしい。Hは容れ物に石ころを入れて持ち帰って、エサをやらなきゃと言って残飯などを入れ、しばらく覗いて見ている。

借りている畑に何本かの栗の木があり、枝からロープを垂らして簡易ブランコを作る。二人が代わり番こに「押して!押して!」 Kはそのうち、ロープをグルグルねじってくれ、手を離すとクルクル回るから、面白いからと。今度は次にブランコを大きく揺らしておいて、棒きれでブランコとの「闘い」をしはじめた。それを見ていた爺が、別のロープにペットボトルを結わえ、別の枝から垂らして「コイツと闘ってみろ」とけしかける。ペットボトルは不規則に跳ねてから襲いかかって来る。Kは、ひとしきり「敵」とたたかう。「エイッ」「ヤーッ」 これぞ、塚原卜伝の剣術修行なるぞ!(卜伝は知らないか、アイツらは……)

Kは、そのうちどうしても、もっといい「剣」を手に入れたくなったらしい。棒きれを探してきて、「刃(やいば)」をつけられないか、「刀(かたな)」らしくできないか、「鍔(つば)」は自分で作ると言う。自宅に戻って、電気カンナで削って刃先をとがらせてやる。ついでに思いついて、その刃先にアルミホイルを巻いてやった。棒きれが、刃が光る剣に変わった。Kは小躍りして喜び、振り回す。どこに行っても持ち歩いた。伸びた草があると、シュパッ、シュパッ、振り回し、パパに見せたい、東京まで持って行きたいとご機嫌だった。
   (つづく)