そこにあるものみな美しき(続)
〔歌のさんぽみち〕
〔歌のさんぽみち〕
前回の「そこにあるものみな美しき」で取りあげた短歌、その類歌を見つけたので紹介したい。
幼な子にはじめての虹見せやればニギといふその美(は)しきにふるふ
(米川千嘉子)
(米川千嘉子)
やはり、言葉を覚え始めた幼子と母の情景。今しも空に虹が架かった。その虹を指さして「ニジだよ」と教える。子はたどたどしく「ニギ」と言う。
彼方の山裾あるいは丘から雲が残る空に向けて虹が架かった。母子の立つ世界が淡い七色に彩られている。「ニジ」が「ニギ」になったかも知れないが、母が思わず「ニジだよ」と言った感動は「ニギ」という子の中にもあって表出されている。《いま・ここ》に母と子は立ち会っている。共同のものになっている。その事実に、その美しさに母は打ち震える。
米川千嘉子は、若き歌人である。子が、まだ言葉を覚えない時期の母と子についても多数の歌を詠んでいる。
みどり子の甘き肉借りて笑む者は夜の淵にわれの来歴を問ふ
まつ白きさくらよさくら女子(をみなご)も卵もむかし贈り物なり
(米川千嘉子)
(米川千嘉子)
次回は、そういう時期の母子の歌を取りあげてみたい。 (つづく)

