「家族」の体温と体臭 
 
 
 映画『万引き家族』のなかで、何度か「ものを食べる」場面が出てきます。
 
祖母の初枝(樹木希林)は、歯がないので歯茎の土手でミカンをしごきながら食べる。
 
タッグを組んで万引きを成功させた後に、治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏・子役)はコロッケをほおばりながら帰る。(このとき、虐待され一人でいる5歳のじゅりを連れて帰る)
 
肉が数切れしかなく野菜ばかりの鍋料理を、信代の妹の亜紀(松岡茉優)らがブツブツ言いながらつついて食べる。
 
家族で食事をするとき、治の妻の信代(安藤サクラ)は台所キッチンに食器を置いて食べるしか場所がない。
 
 食べ物は粗末というかギリギリというか。けれども、賑わしい。
 
 そもそも狭くて乱雑。けれども、それぞれ暮らし向きを表している。初枝と亜紀は、一つの布団で寝ている。祥太は押入が自室で、万年布団で寝ている。
 
 食べ物、食べ方、狭い部屋、雑多な小物、乱雑に架けてある衣類、子どもはダブダブの服、父親はしみったれた下着姿・・・。
 
 映画の最後で、彼らは血のつながりのない家族であることが明かされます。「疑似家族」です。けれども、彼らの体温が感じられる。体臭さえもにおってくる。
 
 そこに、新たに5歳のじゅり(佐々木みゆ)がやって来る。虐待されているじゅりを見つけて(ひと晩くらいと)連れてくるのですが、後でじゅりは自らここにいると言う。
 
 なにか、この「疑似家族」ではあるが、体温と体臭を感じてもう一人家族が増えたような気がするのです。(つづく・鮮)