子どもは、いつも心が動いている 
 
  アントワネット・ポーティス作 『まって』 (あすなろ書房)を読みました。
 
☆お母さんが子どもの手を引きながら、何やら急いでいます。「ねぇ、早くしてよ!」
 
☆子どもはお母さんに手を引かれながら、うしろに何か気になるものがあるようで「まって!」と言っています。
 (この2つの場面はありません。想像してください。)
 
☆「まって!」と子どもが言っていたのは、そこに子犬がいたからでした。子どもは子犬に近寄っていきます。
 
☆お母さんは仕方なく子どもが子犬と触れるのに付き合い、ようやく電車に乗ろうとすると、また子どもが「まって!」と言います。
 
☆「虹だ、虹だよ!」 お母さんが振り返って見ると、雨上がりの空に大きな虹がかかっていました。二人は、その虹にしばし見とれていました。ここで、終わりです。
 
 
  とてもいい絵本ですね。
 
 「まって!」を何度も言う子どもの気持ちもよくわかります。「早くしてよ!」と言いたくなるお母さんの気持ちもよくわかるのです。けれども、母と子二人して虹に見とれる場面はどこかにあるのです。なぜなら、お母さんにも子どもと同じ気持ちが流れているからだ。子どもは、いつも心が動いている。お母さんにも、心が動く芽があって、決して眠ってしまっているのではない。そんな、すてきな絵本です。おわり。
 
(小木曽。これ以後、「鮮」と記名します。ペンネーム「村地鮮」の「鮮」ですので。)