発達障碍が事件を起こすのか 
 
 
 これまで、「新幹線車内殺傷事件」について、<事件・報道>ジャンルで書いてきたことを、今回は<発達障碍>ジャンルに移行します。
 
 事件当初から、小島容疑者については発達障碍を有していることが指摘されてきました。果たして、発達障碍はこのような事件にどう関与しているのか。今回は、そのことを考えたいと思います。
 
 「ダイヤモンド・オンライン」にて草薙厚子氏が「新幹線車内殺傷事件」について、「青少年凶悪事件の加害者には いくつもの共通項がある」として次の4点をあげています。
 
青少年凶悪事件の共通項?
(1)周囲から「まじめで優秀な子」などと見られていた
(2)組織以外での対人コミュニケーションが苦手
(3)大きな事件の直前に、重要な危険シグナルがある
(4)家族が発達障害を理解していなかった
 
 草薙氏は上記の4点についてそれなりに持論を展開していますが、これをかみ砕いて言えば下記のようになると思います。
●『一見、かしこそうに見えても発達障碍を有する子は一定の人間関係以外ではコミュニケーション不全に陥ることが多く、感情の抑制ができないことがある。それを理解せず見過ごした果てに事件が起きる。』
●『発達障碍そのものが事件を起こすのではないが、理解不足や対応の遅れが問題の根底にある』
 
結果的に発達障碍が起因するという論法
  この論法は、発達障碍に原因を認めないようでいながら、「理解や対応の遅れ」に責任を求め、結果的には発達障碍に起因するような思考の構造を持っています。
 
 草薙氏の言う「凶悪事件の共通項」4つのうちの3つ目に、次のようなことが書かれています。
『(3)大きな事件の直前に、重要な危険シグナルがある・・・
 小島容疑者の場合、再三にわたって自殺願望を訴えたり、前述したように「自分だけがお古の水筒を持たされた」ことに納得できないからといって、深夜に両親の部屋に押し入って、包丁と金づちを投げたりしていた。ほかの青少年事件でも、感情の抑制が利かず、抑えきれなくなって大きな悲劇が起こる場合が多い。』
 
 つまり、「危険なシグナル」として、「深夜に両親の部屋に押し入って、包丁と金づちを投げたりしていた」のであり、「感情の抑制が利かず、抑えきれなくなって」行動することが見逃されている。その元には、コミュニケーションが苦手で感情を抑制出来ない発達障碍が見逃され、適切な対応がとられていなかったというとらえ方なのです。
 
 これでは、なぜ「お古の水筒」をきっかけに「深夜に両親の部屋に押し入って、包丁と金づちを投げたりしていた」のかという心の面が抜け落ち、「感情を抑制出来ない発達障碍」というラベリングを浮き立たせることになるのはないでしょうか。
 (つづく・小木曽)