「親子になる」という視点 
 
 
 是枝裕和監督が、映画「万引き家族」でカンヌ国際映画賞最高賞のパルムドール章を受賞したことは周知の通りです。
 
 日雇いで働く父は息子とスーパーで万引きした帰り道、屋外でうずくまる少女をみかねて連れ帰ります。少女には虐待の痕があり、家族で引き取ることにします。
 
 是枝監督には、「そして父になる」という血縁に縛られない家族の姿を描いた作品もあります。
 
 是枝監督が掘り下げてみようとした視点を追っていくと、血のつながりに囚われない人と人とのつながりの強さだと思います。カンヌ映画祭は、俳優ら(樹木希林、安藤サクラ等)の名演もふくめた映画総体の力強さを見たのだと思います。
 
 その時、報道されたのが、東京目黒区で起きた5歳の少女の虐待死問題でした。そこにあるのは、血のつながらない結愛ちゃんと血のつながる実子(1歳)との区別でした。
 
  結愛ちゃんが、覚え立てのひらがなを使って許しを請うていた事実を知り、言葉を失います。結愛ちゃんは、ひたすら「親子になる」を切望していたのに、血のつながりだけが「親子である」という幻想を盾にした家族内の権力から閉め出されたのだと思います。
 
 「親子である」と「親子になる」を根底的に論じた「芹沢俊介養育論集」の刊行が開始されます。(逐次紹介の予定)
 また、映画「万引き家族」は6月8日から一般公開されます。映画「そして父になる」は、DVD化されレンタル可能です。  (小木曽)