世界を開く楽しみ
五味太郎さんの絵本は、いつも、どれも、いい! おもしろい!
ページをめくるたびに、ワクワクする!
ページをめくるたびに、ワクワクする!
今回、紹介するのは音だけの絵本です。正確に言えば、音を文字に置き換えただけで言葉が登場しない絵本です。題は、『るるるるる』です。(「偕成社」刊)
1ページ目。ただ、青い空が見えるだけ。
左上に小さく「るるるるる」の文字。どうやら、何かの音らしい。
左上に小さく「るるるるる」の文字。どうやら、何かの音らしい。
2ページ目。ヒコーキだ! 「るるるるる」はヒコーキのプロペラとエンジンの音なんだ。青空を飛んでいるんだ。
3ページ目。ヒコーキは、くっきり。「るるるるる」の音(文字)も、もっとはっきり。画面の中央にとらえられる。聞こえてくる。
この、1から3ページだけでも素晴らしいですね。読み手の心をくぎ付けにして離さない。「るるる」の音が、空気を伝って聞こえてくるようです。
そして、次のページを開くと・・・
ヒコーキは、白く分厚い雲のなかに突入したようです。「る」・・・と。
ヒコーキは、白く分厚い雲のなかに突入したようです。「る」・・・と。
さらにヒコーキは雲のなかを進んで行くのですが(省略)、出たら・・・
「れ」・・・、そこは暗闇でした。
「れ」・・・、そこは暗闇でした。
雲のなかに入った時は、それまで「るるる・・・」だったのに、「る」と一音。暗闇に出会った時は、やはり一音で「れ」。「むむっ」、「ややっ」のように周りの変化に対するヒコーキの気分を示し、それは読み手の気分にストンと落ちるようです。
それからまた青空に戻って、「るるる」は波打つように自在に飛び回っていきます。読み手をぐんぐん引き込んでいきますね。
一ページめくるごとに、ヒコーキと音と読み手とが一緒になってある世界が開かれていきますね。絵本という媒体の醍醐味だと思います。子どもと一緒に一ページごと開いていくと、本当に楽しい絵本です。(小木曽)