内側からとらえる目線 
 
  映画「アイ・アム・サム」(I am Sam)を観る、と題して何回か書きたいと思います。
 
(ジェシー・ネルソン監督/ショーン・ペン/ミシェル・ファイファー/ダコタ・ファニング/ ダイアン・ウィーストなど。2001年公開作品)
 
 デ・ニーロの主演映画なら、ダスティン・ホフマンなら、アル・パシーノなら、などと同じように主演がショーン・ペンなら間違いない、となるでしょう。しかし、この映画のショーン・ペンはすごい! 敏腕な刑事、大統領を抹殺しようとする狂気の男など、キレのすごさを演じるのと全く正反対の人物・自閉症と知的障害を併せ持ったサム・ドーソンを演じきっているのです。
 
 スターバックスで働く、自閉症と知的障害を併せ持った中年男性サム・ドーソン(ショーン・ペン)が主人公です。
 
  ネルソン監督は、冒頭からサムの目線とカメラを一体化させて、この物語をはじめます。
  最初に映し出されるのは、手だけ。テーブルの上にある砂糖などの袋を1セット毎にそろえたり、スターバックスの名前が見えるようにマグカップを丹念にそろえたりします。
 
 それから、サムの顔がアップされます。砂糖の小袋とマグカップがそろうと、手を叩いて喜ぶのです。
 
 サムが自閉症者である特徴が、ここに映し出されています。自分の周囲の世界が秩序だっていることを、自閉症者は好みます。そのことを、まずサムの目線から、つまり内側から映し出し、その後に手を叩いて満足するサムの姿を映し出して、サムの特徴を観客の目に焼き付けます。この数分間、セリフは「無」です。けれども、主人公サムの特徴と様子は端的に効果的に提示されています。
 
 さて、スターバックスの店長がサムに告げます。「病院から電話があった。そろそろ行かないと。」しかし、サムは店長の言葉をオウム返しにつぶやいてウロウロします。病院でサムの子どもが生まれるというのですが、サムはどこか現実味が薄く、上の空で「病院。行かないと」と繰り返すのです。
 
 ここにも、新しい事態に対して表層的なオウム返しで対応する自閉症者の特徴が提示されています。
 
 そして、このサムに子どもが生まれるのが、これからのドラマの幕開けとなるのです。(つづく)


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