よく聴き、受けとめる 
 
  沈黙を「聞く」ことはできないだろうと思います。実体としての言葉がないから、耳で聞くのは不可能です。けれども、こころを傾けて「聴く」ことはできると思います。
 
 ここまで、吉本隆明氏による《自己表出》《指示表出》の考え方を使って、会話が苦手とされる発達障害について考えてきました。吉本思想についての私の理解がまだまだ不十分であることと、「《自己表出》なんていう見えないものがどこにあるんだ?」という一般的な受け取り方があるなかで、わかりにくかったかと思います。
 
 「《自己表出》は《指示表出》よりも先にある」と吉本氏は言います。その《自己表出》のことを芹沢俊介氏は、やむにやまれぬこころの動きが《力こぶ》として表れるのだと言っています。
 
 目には見えない《力こぶ》が確実にあるが、表に出されない・・・それをよく聴き、受けとめたいと思います。