集団の約束事が苦手
 
 東田直樹さんの本「風になる~自閉症の僕が生きていく風景」(ビッグイシュー日本・刊)を読み続けながら、自閉スペクトラム症・発達障碍の「いい違い」について継続して考えています。
 
 東田さんが幼稚園のころ、「前を向いて!」と言われて、どちらが前がわからなくて注意された、その時にすぐ前列の子が横を向いていたのでそちらが「前」かと思ったりした、そういう体験を書いています。
 
 この話は、たとえば幼稚園の集会室や運動場などでイベントやお話しがあるときは、自ずと一定方向を向いて集合する。難しい言葉で言えば、『共同規範』が存在していて、その共同規範のなかに『正面』という空間が約束づけられている。だから、東田さんが言われた「前を向いて!」というのは、幼稚園という集団の共同規範に織り込まれた『正面』を向くよう注意されたということです。
 
 『正面』には演台があることもあれば、主任の先生が立っていることもあるでしょう。集会などをする場合には、いま自分が向いている「前」よりも『正面』を優先して向くよう求められます。
 
 こういうように、集団の共同規範をわきまえて行動するのを苦手とする人たちがいます。それは、集会の時間や『正面』という空間などの約束事が目に見えづらく、個々のリズムと別物で、察知していくべきものだからと思います。
 
 『共同規範』はガチガチでなく、「そこそこでいい」というように時代が変わりつつあるように思います。そういう意味で、集団の約束事を苦手とする人たちに学んでいくことが多くなっていくように思えます。
 
 ここまでは、集団の約束事における「時間」と「空間」の問題でしたが、もう一つ「人間」の問題があります。(つづく)