目に見えない放射能・・・ 
 
 原発事故のために避難した子どもに対する、いじめの状況を文部科学省が調査・公表しました。調査のきっかけは、昨年秋に横浜に避難した男子生徒が小学校時代に、同級生から暴力をふるわれたり、金銭を要求されていたりしたことが発覚したことからです。
 
 調査によれば、13件のいじめが確認できたようです。「福島に帰れ」「放射能がうつる」などという言葉を投げつけられ、傷ついている場合が多いということです。把握されたケースは、氷山の一角かもしれないという可能性もあります。
 
 勧告を受けてであれ、自主避難であれ、原発事故による避難のために慣れない避難先で不安な生活を送っている子どもが、さらにいじめに遭うのはあまりに理不尽なことです。
 
 もともと、いじめが理不尽であり、さらに原発事故被害者がいじめを受けることについて私たちは目を凝らして見極める必要があると思います。
 
 調査を受けて文科相が防止策として、放射線に対する科学的な知識を身につけることを呼びかけましたが、いったいその「科学的な知識」とは何を指すのでしょうか。 
 
 一国の首相がオリンピック開催地獲得を有利に進めるために福島第一原発は「コントロールされている」と言うのです。復興大臣は区域外の自主避難者の避難について、「自己責任」と言うのです。
 
 放射能が目に見えないことをいいことに、事故の影響や対策についての言説が伸びたり縮んだり、動くのです。
 
 いじめの本質は、人を権力的に追い込む『仕切り線』を手中にすることだと考えられます。社会にあるそれを下敷きにして、繰り返し特定の対象に投げつけることで自己を優位に立たせられます。
 
 「福島に帰れ」は、「移民・難民は帰れ」につながる排斥であり、居場所を縮めるものです。「放射能がうつる」といういじめが複数報告されていることは、それ自体が国の避難政策が明確な基準のもとに浸透していないことを表しています。
 
 原発事故の被害を小さく見せかける思惑があるのではないか。それは、いじめを小さく見せかけようとゴタゴタする事例と似ているし、タチが悪いのではないか。そう思いますが、どうでしょうか。