責任能力認定し、求刑通り 
 
 3月25日付け「中日新聞」の一面にて、元名大生に無期懲役の判決が下されたことが報道されました。殺人や殺人未遂の罪に問われ、責任能力の有無が争点となっていたものです。
 
 判決理由で次のようなことが書かれています。
①各事件では状況に応じて冷静に行動しており、自らの意思で犯行に及んだ
②発達障害と双極性障害(そううつ病)の影響は一定程度あったが、限定的だった
 
 ①と②を見るかぎり、『冷静な行動』=『自らの意思で犯行』=『障害の影響は少ない』=『責任能力はある』と地続きの判決理由になっています。
 
  この4段重ねの論法の「起点」にあるのは、『冷静な行動』のとらえ方です。『冷静な行動』とは、次のような事例を指しています。
●元女子学生は、この人だったら自分の部屋に招くことができると、「知り合い」であることを利用し、計画的に行動し、殺害している。
●実際の殺害場面で、知人の後ろから間合いとタイミングを測って襲うなど、冷静に犯行行動をしている。
 
 「身勝手な興味本位」を持ちながら、冷静に、合理的な行動をしている。であるなら、引き返す事も出来たはずだ。・・・こういうことを、判決理由は言っていると思います。
 
 しかし、躁うつの高い状態において、普段は実行しないようなことを妄想に引っ張られて実行してしまう経緯を見ていないと思います。妄想に駆られる中でも、「冷静・合理性」はあり得ると思います。本人の治療を優先するよりも、「断罪」優先の考え方になっているので、犯行過程のなかに「冷静・合理性」を見たとたんに全体を見失ってしまったのではないでしょうか。
 
 児童精神科医の高岡健氏が判決後の談話で次のように語っています。(中日新聞3.25)

「元学生は犯行前に不眠になるなど、重いそう状態の症状があった。犯行への精神障害の影響は限定的としたのは誤りで、もっと精神医学を理解して判断してほしかった。・・・判決が確定すれば、元学生を十分な治療を受けさせないまま放置することになり、本人にも社会の安全のためにもならない。」