ススキに斬られる
 
 野外で作業をしていて、ふと気がつきました。腕が何かにやられたような感じでした。「やられた」というのは虫に刺された感じではなく、何かに切り裂かれたような、シカシカ、ヒリヒリする感じでした。
 
 自分が通った経路を振り返ってわかりました。犯人は、ススキでした。無意識にススキに触れて、腕を小さく切られたのです。
 
 ススキのみならず植物は、ケイ酸というガラス質の物質を地中から取り出して自らを垂直に立たせています。その証拠に、昔から陶芸の焼成において植物を投げ込むとその灰が釉薬の役目を果たすのです。植物灰に含まれるガラス質が、陶器の表面をコーティングするのです。
 
 とりわけ、ススキにはガラス質であるケイ酸が多くふくまれ、私のようにススキの葉に触れて腕を斬(切)られるというわけです。
 
 ところで、英語で「草」は「Grass 」と表記され、「ガラス」は「Glass」と表記されています。「R」と「L」の部分が違うだけで、「グラス」という発音は同じです。これは、たんなる偶然か、それとも上記のようなケイ酸(ガラス質)が両者の成り立ちに共通しているがためのことか、どなたかご存知ないでしょうか。