アリは、どの足から歩き出すか 
 
 
 昆虫のアリは働き者ですが、時として立ち止まります。では、再び歩きはじめる時、6本の足のうちのどの足から歩きはじめるでしょうか。右足の1本目? 2本目? 3本目、それとも左足の・・・??  そういうきまりは、あるのでしょうか、ないのでしょうか。
 
 そもそも、ふつうはこんなこと思いつかないですし、思いついたとしてもそれを観察して突きとめようとはしないでしょうね。こんなこと、話題にもならないのかも知れません。
 
 それをやった人がいます。昆虫学者でもファーブルでもなく、画家の熊谷守一という人です。(1880-1977 初代岐阜市長の三男として生まれる)
 
 私も、アリの歩き方を観察してみましたが、動きが早く、足が小さ過ぎてよくわかりません。熊谷守一は、よく突きとめたなと思います。よほどの時間がなければ、できないことだと思います。
 
 晩年の熊谷守一の作品は、極端なほどにシンプルで、子どもが描いたんじゃないかとさえ思えるほどです。けれども、描いたものの姿がくっきり目に飛び込んできます。
 
 壮大な、無駄な時間を費やす。そういう精神の強さがこの人にはあったように思えます。
 
 さて、アリはどの足から歩き出すか? それは、まだ私も確かめていないことですので責任を持ってここに書くことはできません。悪しからず。