やれやれ・・・排泄介助のこと、再び
 
 認知症の母の排泄介助をしていたときのこと。軟便のときは、通常よりもやっかい極まりないことになったりします。腰回りや足の付け根にもソレが垂れて付着し、拭き取るのに時間がかかるし、溜息も出てきます。ようやく、お風呂に入らせてふと母の横顔を見ると、何だか昔の唱歌でも歌い出しそうに口元が緩んでいるのです。軟便処理のときは「やれやれ、クソっ」だったのですが、終わってみれば「やれやれ、ふ~~」です。
 
 重度の障害者への介助前と後の表情や様子の変化というものは、とても小さいのかも知れません。上記の母のように口元を緩める仕草さえ、ややもずれば見えずに済んだかも知れません。しかし、母が口元を緩めるのに気づいて私の口元も緩んだように、ささいだけれども大切な瞬間が時として訪れるのだと思います。
 
 山本おさむ氏による、障害者施設を舞台にした名作漫画「どんぐりの家」は、実話を元にした物語です。そこに登場するボランティア学生は、「あの子たちは生きていると言えるのか」とつぶやくのですが、あることをきっかけにして自らを見つめ直していきます。それは、ある障害者が言葉を口にできずとも、わずかな力で手を握り返し、意思を伝えようとしていることに気づくのです。
 
 
 「あの人達に人格というものはあるのかね」と、障害者施設を視察後にポツリと漏らした都知事がいました。そんなに昔の話ではありません。