今年読んだ小説の15冊目。単なる自分の記憶用です

しあわせの書 泡坂妻夫
ヨギ・ガンジーなる人物をはじめとする怪しい三人衆が新興宗教の御家騒動に巻き込まれ、超常現象の謎に迫りつつ解決を目指すという話
もともと昭和62年に発行された本。書店をふらついているときに目にとまり購入することとなった。シリーズ物らしいがその事を全く知らなかったため、シリーズ物の途中作品から読むことに(読むこと自体に問題はなかったが、主人公がどのような人物なのか未だによくわからない)
当然、表現が古めかしいところがあったが案外読みやすく、時代を超えてミステリー作品として全然未だに通用していると思う
この本に興味を持って手に取ったきっかけは、帯にこの本にはある秘密があり、それを未読の人には教えないように書かれていたから
その昔、「シックスセンス」という映画があった。私がゴルフ場で研修生をしていた頃だったから、上映されていたのは25年くらい前になるのだろうか
一緒に働いている研修生のうちの1人が(確か床屋の息子[誰だよ])、シックスセンスを観て「あの映画は凄い秘密がある!!」と言っていたことがきっかけで私もその秘密が気になり観ることに
シックスセンスの冒頭で、主演のブルース・ウイルスが「この映画にはある秘密があります。観ていない人にこの秘密は絶対に教えないでください」みたいなことを伝えて映画は始まった
その後、シックスセンスを観終わり秘密を知った私の感想は、「本人が気づかんわけないやろ」と床屋の息子程にはこの映画を評価することは無かった
そこから25年くらいの時が経ち、まさか本屋で「シックスセンスと同じこと言ってる」ということがきっかけとなり小説を手に取るとは思わなかった。人生とはわからんものである
しかも、なんと昭和62年の時点でこの著者はシックスセンスと同じ手法で本書を売り出しており、昭和の時代からそんなことをしている人がいったいどんな秘密を用意しているのか気になり購入を決意した
話しの筋立て自体はそこまで特異なものではなく、最終的な落としどころもそれほど以外なものではない。内容はあくまで現代でも通用する普通のミステリー作品
しかし、最後に明かされる秘密には驚いた。シックスセンスの秘密の100倍は驚いた
謎というよりはトリックが明かされるのだが、その感想は
よくもまぁ、こんなことが出来るな
というもの
全然違うのは百も承知でいうと筒井康隆が書いた「残像に口紅を」という本を読んだときの感覚に近い
秘密を知ったときには、その衝撃で危うく小説の内容を忘れてしまいそうになったが、この秘密(というか制約)を抱えながら普通に小説として通用する内容を備えていることは賞賛に値すると思う
小説家としての能力とは違う突出した他の能力を持った方が、小説家としての能力も備えて書いた本だと言ったらいいのだろうか
ちなみに、この記事を読んで本書に興味を持って読んだ人が私と同じように秘密を評価出来るかはわからない。25年前の床屋の息子と私の間にあった齟齬と同じようなものが生じることもあろう
個人的には、普通の小説で満足出来なくなってきたらこの方の小説をまた手に取ってみようと思う。本書が何に近いかというと、多分それは手品だろう。