今年読んだ小説の7冊目。単なる自分の記憶用です

掏摸 中村文則
掏摸で生計を立てる孤独な若者の生活が、ある親子と出会ったことで少しずつ変わりだしていく。その後絶望的な状況に追い込まれていくのだが、最後の最後まで個として足掻く物語
芥川賞作家である中村さん。その昔「教団X」という作品から入ったが、そのときはそこまで入り込めなかった
太宰とは随分違うと思うが、この人の本を読むと太宰治を思いだす。根本的に暗い話しを書かれる方というイメージがあるが、今回も基本的には暗い話しだった
とりあえず
作家って凄いな
と思える人。中村さんの伝えたいことがどこまで自分に伝わっているのかわからんが、個人的には読めて良かったと思えた。文章に奥行きがあるように感じ、上っ面だけ読んでてはいかんとは思うが、実際どこまで読めているのか自分では分からない
主人公は器用に生きることが出来ずに人生の裏街道を歩むことになるのだが、だからこそ味わえるものもあり、人生や人というものを掏摸というものを通して描きたいのかなと勝手に思った
ラストは読者の想像力に任せているというか頼っている
個人的にはこのような終わり方は好きではない
しかし、姉妹本もあるようで、それを読むと補完されることもあるらしい。よく知らんけど
その昔、伊坂幸太郎さんの「ゴールデンスランバー」という小説を読んだときのこと。この小説は間違いなく面白いのだが、納得いかんというかよくわからんかったところがあった
しかし、姉妹本といえる「モダンタイムス」という本を読んだことで大変スッキリしたということがあった(ちなみに、モダンタイムスは往年の伊坂ファンからそこまで高い評価を得ていないようだが、個人的には人生観を変えてくれた本だと思っている)。今回もそんな感じなんだろうか
主人公は天才的な掏摸師なわけだが、掏摸の作業が描かれているところをじっくりとその作業を想像してみた。1人でその作業をやってみようと必要な動きを想像を巡らせつつ四苦八苦していたのだが、その結果、絶対に自分では無理だと確信し、掏摸をする気は無くなる(もともと無いけど)
暗い話しではあるが、だからこそ描けるものもあったと思える本。姉妹本も必ず読むことになるだろう。