甘党な姉 1 | 白金家の座談会

白金家の座談会

ブログはもうほとんど書いてません。
現在は「小説家になろう」で活動してますので、新作が読みたい人はお手数ですが向こうで私の名前を探してみてください。
サイト中段のアンケートは時折覗きに行きます。

 3月下旬。春休みが終わるまであと少しくらいか。俺は美香姉、愛理姉と3人でショッピングモールを訪れていた。理子姉と百合姉は仕事のため今はいない。食料品売り場と専門店街の境目あたりの所で俺たち三人は立っていた。

「それじゃあ、私は今日の晩御飯買ってくるから。美香ちゃんと2人で暇つぶしてて」

「わかった」

「……うん」

 そう言って愛理姉がカゴを持って走っていくと、俺と美香姉が2人残された。俺と美香姉が2人きりになる機会はなかなかないため、いざ2人で何かするとなれば少し焦る。美香姉はこちらをぼんやりと見つめて、そして、俺の左袖をちょんと掴んできた。

「美香姉?」

 美香姉は辺りの匂いをくんくんかぐと、ぼんやりと甘いにおいがする方向へ指をさす。向こうにあるのはスイーツ売り場だ。美香姉は甘いものが好きだから何か食べたいのだろう。手持ちも結構ある。それに、美香姉の笑顔も見てみたい。

「……スイーツ売り場行くか?」

「うん」




 一緒に歩いていた。最初は周りの人目を気にしていた美香姉だったが、徐々にそれに慣れてきたのだろう、俺の左手と彼女の右手をつなげてきた。別にそうされたくないという訳ではないが、照れくさい。ちらと彼女の方に目を向けると、彼女は頬をほんのりとピンク色に染めていた。

 ショッピングモールのスイーツ売り場。ケーキ、クレープ、和菓子、アイスクリームなど、様々なスイーツが集まり、自らのテリトリーを広げるため戦っている場所。そんなところもお客さんの美香姉から見れば天国なわけで、最初に美香姉の足が止まったのは和菓子売り場だった。後ろからむんずと引っ張られ、俺は美香姉が見つめている物を見る。

「これを買うのか?」

「まんじゅう」

 美香姉の目がキラキラとしていた。俺が本当にこれを買うのか、という目線を送ると美香姉が寂しそうな顔をし、俺の腕にくっついてくる。そしてそのまま離れることなく俺をじっと見つめた。俺の左腕に天使がおる。

「……買うか」

「ありがと」

 美香姉はご満悦のようで、俺の左腕に顔をすりすりとこすりつけた。友達が近くにいなくてよかった。こんな姿を見られていては春休み明けが思いやられるからな。買ったまんじゅうが入った袋を提げ、また二人で歩き始める。美香姉は相変わらずくっついたままだ。

「……将」

「なんだ?」

「……なんでもない」

 そういってそっぽを向く美香姉。さっき買ったまんじゅうを美香姉の顔に近づけると、ちらちらとまんじゅうに目を向けつつこっちを見つめてきた。目があった瞬間美香姉はびくっとなってまた目線を下に落とす。美香姉の右頬が俺の左腕で擦れた。

 少し照れくさい気持ちになりながら、買ったまんじゅうを美香姉の方に差し出す。美香姉は大事そうにそれを抱えると、俺の左手をひょいと持ち上げた。

「んっ」

「美香姉?」

 美香姉が俺の左手の甲にキスをした。驚きで立ち止まっていると美香姉が引っ張ってきた。俺はぐいっと引っ張られるように美香姉の方へ歩く。

 空いていた右手で美香姉の頭をなでなですると、美香姉は嬉しそうな声を出した。