一寸先は未知
始めてお越し頂きましたお客様が森陶岳先生の酒呑を手にしておっしゃいました。
「私のような人間がこんな素晴らしい作品を持たせて頂いてよろしいのでしょうか?」と、
そこで想ったのです。
出会うのはその人が出会うに相応しい資格を備えている事だと。
芸術は独自の周波数を有しています。人の琴線に触れるのは、その人の周波数と目の前の作品の周波数が同調する時です。
その出会いが人に豊かな時間をもたらしてくれます。
一寸先は未知です。
大鵬さんの想い出
僕が小学生の頃、大鵬さんは幕内に登場しました。
それは登場と云う言葉がピッタリの表現で、いきなり強い!強い!
それまでは、相撲は若乃花と朝潮でしたが世界が一変しました。
忽ち大鵬さんのとりこになりました。
子供は素直に強いものに憧れます。途中から、あまりの強さに大鵬さんから柏戸さんへと鞍替えをしました。けっして大鵬さんを嫌いになった訳ではありません。
学生時代をすごした東京で一度だけ大鵬さんをお見かけしました。
或る日、電車に乗りドアー越しに外を眺めていました。両国を出て間もなくの頃、路地に羽織袴で椅子に座って居る大鵬さんが見えました。「アッ!」
背筋をキリッと伸ばして腕組みをしていました。じっと真っ直ぐ前を見る姿勢でした。お付の人もなく、お一人でした。
そのオーラは電車の窓越しにも息が詰まるものでした。
40年経っても、鮮明に覚えています。