<草原に抱かれて (脐带・.The Cord of Life/・中国(蒙古)・2022)> ★★★☆

 

 

中国映画で監督以下主なキャストは中国人ですが、舞台は内モンゴル、登場人物はモンゴル人、セリフもモンゴル語です。原題は“へその緒”で親子の絆を示すと共に、耄碌した母親がふらりと出て行かないように、息子が2人の間を長い帯で結んでいることで象徴しています。

 

>モンゴル自治区の都会に暮らすミュージシャンのアルスは、故郷の町で兄夫婦と暮らしているアルツハイマーを患っている老母が気掛かりで、兄夫婦の住む集合住宅の一室を訪ねます。母は狭い一室に閉じ込められて、兄夫婦に叱られながら日々を過ごしているようで、アルスのことも覚えていません。アルスはそんな母に同情して引き取って、昔、一家が住んでいた草原の真っただ中にある空き家での生活が始まります。家には電気がなく、昔使っていた発電機も故障し、点検に来た電気屋の娘タナと知り合います。母の病状は次第に進み、、徘徊を繰り返すので、アルスは帯で母と自分の体を結んでしまいます。残っていた古い写真を見た母は“想い出の木”を見たいと言い出し、アルスは古いサイドカー(側車付バイク)を引っ張り出し、移動用ゲル(組み立てテント家屋)を積んで探す旅に出ます。近隣の住民が集まって祭りが開かれタナとも再会し、母は昔を思い出して踊り出します。アルス母と結んでいた帯を切り離します。時が流れて、草原の一本道をアルスがサイドカーで走っていますが、側車にはいつも乗っていた母の姿はありませんでした。アルスは”想い出の木“を発見して駆け寄ります。

 

地平線の彼方にまでまっすぐ道路が延びるような内蒙古の砂漠地帯を舞台に、老いて記憶を失った母親への息子の情愛が淡々と描かれ、心が洗われるような作品でした。現地の風俗や習慣もさりげなく取り入れられていました。ただ、演出の未熟か脚本の不備か判りませんが、突っ込みどころもかなり目立ちました。兄夫婦が生活難から車を売り払ったというのに、いtのまにか車に老母を乗せて街中へ行き、用足しをしていうるうちに老母は俳諧し、車も消えていたり、見渡す限り家のない生まれ故郷の廃家や、想い出の樹を探す旅先でも、食料をどうやって調達しているのかも不明でした。母が亡くなった経過は一切説明がなく、埋葬はどうしたのかも説明がありませんでした。祭りの夜、傍と結びついた帯を断ち切るシーンがありますが、それで親子の縁を断ち切ったとは思えませんでした。主人公がミュージシャンという設定なので、もう少し、彼の音楽を取り入れても良かったと思いました。