<ワン・セカンド 永遠の24フレーム』(一秒鐘・中国・2020)★★★★

 

 

張芸謀監督の作品ということで期待して見ました。文化大革命時代の中国を舞台に、映画フィルムの中に1秒(フィルム枚数で24枚)だけ映っている娘の姿を見るために労働改造所を脱走した父親と、幼い弟との貧しい暮らしのために必死に生きようとする少女との出会いを描いています。

 

ただ、現代では見られない1本の映画のために、35mmフィルムの入った缶を何缶も使い、それを次から次へと映画館へリレー式に運ぶのは、デジタル時代の今の若い観客には理解出来ないのではないかと思いました。私が子供の頃、フィルムの継送が遅れたり、上映中にフィルムが切れたりして止まってしまうアクシデントは何度か記憶にあります。

 

 

>1969年、文化大革命の最中の中国で、反動分子として逮捕され、強制収容所から脱走したチャンは砂漠を越えて一夜遅く小さな町にたどり着きます。数ヶ月に一度の映画会が終わってフィルム缶は隣町へバイクで運ばれることになっていますが、一人の少女がその一缶を盗みだします。それを見たチャンはそれを取り返しますが、バイクは行ってしまいます。彼はそれを返すために、少女と共に砂漠の中の一本道を歩いて行きます・・・・という展開で始まります。たどり着いた隣町は少女が小さい弟と住む町で、姉妹は両親がおらず、名前さえ知りません。その町で映画会を開催するファンは足りなかったフィルムを返してもらい、チャンが映画にこだわるのは、上映されているニュース映画の中に、彼の娘が一秒間だけ映っているのを見る多め、少女がフィルム缶を盗んだのは、友人から借りた映画フィルムで作った電灯の笠を加熱で燃やしてしまったのを返すためと判ります。事情を知ります。しかし、他のフィルム缶の一つが運搬中に落として汚れてしまい、町の人達が総出で洗浄と乾燥を手伝い、<英雄児女>の上映会は無事開催されます。併せてニュース映画も上映され、チャンはその中に娘の姿を見て涙ぐみ、ファンは映画会終了後、何度も繰り返して上映してやり、娘の映っているシーンを2コマだけ切り取ってチャンに贈ります。また、自作の映画フィルムで作った電灯笠を少女にプレゼントします。しかし、その直後、保安警察画家明け付け、チャンは逮捕連行されてしまい、砂漠道を連行中にもみ合いの最中にその2コマは捨てられています。2年後、服役が解けて町に戻ったチャンは少女と再会、失われた2コマを探しにゆきますが、もちろん見つかるはずはありません。しかし、孤独な2人に信頼関係が生まれて微笑み合います。

映画を通じて大人と子供が深く結び合うという内容は、まさに中国版<ニュー。シネマ・パラダイス>というところでした。しかし、町の人々が共同して汚れたフィルムを洗い清めて上映にこぎつけるという挿話は、張芸謀監督の映画にかける思いの強さが込められていました。また、文化大革命の非条理を反政府にならない程度の暗に批判していることも察せられました。

 

ただ、広大な砂漠を超えて、バイクでも何時間もかかる隣町の少女がどうやって来たのか、なぜ映画フィルムがあるのを知っていたのか、逮捕したチャンをなぜ車で移送せず、あえて砂漠を歩いて移動するのか等々不明な点が多く、砂漠の広大な風景を挿入したいがための設定のような気がしました。