<3つの不倫 (ANTARES・オーストリア・2004)> ★★★☆

 

 

、珍しいオーストリアの風俗映画ということなのでCATVで見てみました。原題の”ANTARES”はサソリ座にある赤く輝く一等星のことですが、映画のタイトルとの関連は最後まで判りませんでした。邦題の”3つの不倫“はそのものズバリで、 同じアパートに住む3組の男女の不倫をオムニバス風に描いていて、映画の冒頭に出て来る一つの事件で絡み合うところは、映画化もされた同じオーストリアの文豪アルトゥール・シュニッツラーの名作「輪舞」を翻案したような作品でした。

 

>夜のウィーンで交通事故があり、タクシー運転手と客の中年男性が亡くなります。

それより以前のこと。とあるアパートに優しい夫アルフレッドと十代の娘を持ち、一見幸せな生活を送っている看護師のイヴァにはトマシュと不倫関係にあり、夜勤と偽っては密会を重ねていましたが、夫に気付かれて険悪な仲となります。トマシュにはイヴァのヌードを撮りたがる性癖がありました。同じアパートで恋人のマルコと同棲しているソーニャはスーパーのレジ係をしていますが、マルコを引きとめるため妊娠したと偽り、酒も煙草も絶っていましたが、マルコが同じアパートに住む子持ちでバツ一のニコールと浮気しているのを知って睡眠薬自殺を図ります。そんなニコールに元夫の不動産業者のアレックスは復縁を求めて執拗に彼女を追い回し、暴力さえ振るいます。イヴァ夫婦は新しいアパートの下見に行きますが、案内人のアレックスの傲慢な態度に腹を立てて帰ります。やがて、冒頭の交通事故が発生します。昏睡状態で搬送されて来たソーニャの看護をしていたイヴァのもとに電話が入り、死亡したのはトマシュだったことを知ります。心配して病院にやって来た夫アルフレッドの前で茫然として立ちすくみます。

 

様々な男女の関係がある事件で一つに繋がるという設定は特に珍しくありませんが、この映画では登場人物の描写が必ずしも時系列的に並んでいないので、解りにくいところがありましたが、やや強引ですがそれほど違和感なく結びつけてしまったのはさすがでした。ただ、不倫がテーマだけに当然、モザイクのたっぷり入ったセックス・シーンも何度か登場しますが、風俗映画ともポルノ映画ともつかない中途半端なものになってしまい、セックス・シーンはほどほどにしておいて、当事者の不安や嫉妬をもっと掘り下げた方が良かったのではないかと思うのは私だけかもしれません。