<広重ぶるう (NHK・2024)> ★★★★

 

 

私はTVドラマは殆ど見ませんが、内容につられて、昨年、放映されたのは知らず、最近,再放映されたのを録画しておいて見ました。

 

葛飾北斎と並んで有名な浮世絵師・歌川広重の半生を描いた110分のドラマでした。私は浮世絵が好きで、特にこの2名は大好きです。ただ、近くにすみだ北斎美術館はあり、時々行きますが、広重に関する施設はなく、書物やTV以外に直接、作品を見る機会は色々な展覧会で並んで展示されているのを見る程度でした。彼が再下級の武士で、火消同心、現代で言えば公務員である消防士の出身であることは知っていました。ドラマは、彼が火消氏として消火にまい進して足を負傷するところから始まります。広重を演じるのは阿部サダヲ、妻の加代を優香ですが、北斎を長塚京三、広重の出世に貢献する画商・保栄堂の主人を髙嶋政伸と、NHK作品らしく脇役をベテラン俳優が固めていました。タイトルの“ぶるう”は“Blue”のことで、当時の日本の絵具では出せなかった深い青色を出し“ベロ藍”と呼ばれた高価な舶来品の絵具の事で、後に彼の作品がヨーロッパに伝わり、”広重ブルー“として賞賛されました。浮世絵で最初に使ったのは葛飾北斎でした。

 

>文政13年(1830年)。歌川広重は代々続く火消同心を務めていますが、絵を描くことが好きでした。しかし、派手な美人画や役者絵が人気を集めていて、彼の地味な画風は一向に人目を惹かず悩んでいました。そんな広重を、妻の加代はこっそりと質屋に通って生活費を補いながら励まし続けています。ある日、売り込みに行った浮世絵の版元から渡された団扇に「ベロ藍」で描かれた絵を見て、自分が追い求めていた色なので愕然とします。広重は火消同心の役を甥に譲って画業に専念することを決心し、最後の御奉公として将軍の京都行きの共の一人として東海道を上りますが、行く先々で見た風景のスケッチに余念がありません。加代が通う質屋の主の弟の孫八は彼の才能を認めて版元となり、東海道の風景画のシリーズを描くことを勧めます。彼の描く作品は、それまでの風景の単純な描写ではなく、動きのある人物画を加えたことで大評判となり、一躍、名所画の人気画家となります。孫八から加代の質屋通いを初めて知った広重は、質草の全品を取り戻して加代に謝り、彼女をモデルにそれまで手を出さなかった人物画を描きますが、その矢先、彼女は急逝してしまい悲嘆にくれ、以後二度と人物画を描こうとせず、火消同心に戻ります。安政2年(1855)、江戸を大地震と大火が襲い、江戸は壊滅的な被害を受けます。広重は、失われた江戸を求めて再び筆をとり、「名所江戸百景」を完成させます。

 

広重に関する色々な言い伝えを次元を飛び越えて繋ぎ合わせた感じはありますが、芸術家らしく見えない阿部サダヲのひょうひょうとした演技で飽きさせられずに見ました。不特定多数の視聴者を意識して、芸術家の苦悩を描いた作品というよりも、妻の献身的な努力を描いた夫婦の愛情物語という感じでした。少ししか登場しませんが、長塚京三の北斎も私のイメージにぴったりでした。ただ、映画と違ってTVドラマのせいか、VFXがややお粗末でNHKらしくないなと思うところが数か所ありました。