<オッペンハイマー(Oppenheimer・米・2023)>

 

 

昨年のアカデミー賞を総なめしたアメリカの物理学者ロバート・オッペンハイマーが、世界初の原子爆弾を開発して「原爆の父」として賞賛されながら、その危険性から更なる開発を批判して共産主義者と指弾され、時の大統領からは”泣き虫“と批判されて孤立化してゆく生涯を描いた作品です。

 

第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの原子爆弾開発に焦ったアメリカは、「マンハッタン計画」という極秘研究機関を設けて、アリゾナ州の砂漠の中に実験場を設け、オッペンハイマーをリーダーとして開発を促進、1945年7月16日、世界で初めて原爆実験に成功し、同年8月6日に広島に、8月9日に長崎に投下、20万人以上の民間犠牲者を出しますが、日本の無条件降伏をもたらします。本土決戦になった場合の10万人以上の米兵の犠牲を阻止したとオッペンハイマーは賞賛されます。しかし、彼が原爆開発を促進したのは、ナチス・ドイツが彼の同胞であるユダヤ人の大量虐殺を阻止するためで、既に降伏寸前だった日本への投下は想定外だったため悩み、更なる原爆開発推進に反対します。しかし、ソ連でも原爆開発が促進されており、彼の弟がかつて共産党員だったため、ソ連のスパイとして告発されます。ソ連の台頭を恐れたアメリカでは赤狩りの嵐が吹き荒れ、1954年、オッペンハイマーは聴聞会で追及を受け、1959年には、かつての同僚で米国原子力委員会の長官として原爆推進を先導するストローズによる弾劾の公聴会が開かれます・・・・

 

この作品は、原子爆弾開発成功に至るまでのオッペンハイマーの努力と、開発推進による人類の滅亡を予測して批判して告発されるに至るまでを時系列が交錯する形で展開しますが、前者をカラーで彼の視点から、後者をモノクロでストローズの視点から描いています。視覚的に判り易いと言えば判り易いですが、180分という長尺の中で頻繁に交差し、登場人物も多岐に及ぶので、事前に予備知識を持って行ったのですが、頭がこんがらがってしまいました。更に、終始、恐怖を覚えさせるおどおどしいBGMが響きっぱなしなので、居眠りするような余裕はなく、見終わってひどく疲れました。

 

アインシュタインも登場し、ストローズとの歓談中にオッペンハイマーが割り込んだことに、ストローズのオッペンハイマーへの不信感が芽生えたというエピソードや、ハリウッドえいがらしく、人妻との不倫関係もさりげなく挿入されていますが僅かで興をそぐほどではありませんでした。

 

全体として、長旅で楽しかったけれどそれなりにかなり疲れた、というような作品でした。