<敦 煌 (日/中・1988)> ★★★☆

 

 

この作品は、井上靖の小説を日中共同で映画化した作品ですが、中国側の全面的協力もあって壮大なスケールと圧倒的多数のエキストラの出演による,現代に見ても143分の超大作(映画の出来は別にして)となっています。主演は若き日の佐藤浩市と西田敏行、渡瀬恒彦が演じています。敦煌・莫高窟は中国内シルクロードの観光スポットとして良く知られていますが、この映画の時代背景を頭に入れておかないと少々判りにくいところがあります。

敦煌は、中華人民共和国甘粛省北西部の都市で、かつてシルクロードの分岐点として栄えたオアシス都市であり、近隣にある莫高窟とそこから出た敦煌文書で有名です。

西夏は、1038年、タングート族の首長・李元昊が現在の中国西北部(寧夏回族自治区)に建国した王朝ですが、1227年、モンゴル帝国のチンギス・カンによって滅ぼされました。この映画にも出て来ますが、独自の言語と文字を持っていました。

ウイグルは、4世紀から13世紀にかけて中央ユーラシアで活動したテュルク系遊牧民族ですが、現在もその後裔が中国北西部に住んで自治区を形成していますが、中国政府の弾圧が人権問題となっています。

 

>科挙(官僚採用試験)に失敗した趙行徳は、新天地を求めて、西方の新興国・西夏へ旅立ちますが、西夏の傭兵部隊に捕らえられそのまま入隊させられた。王礼の率いる西夏の傭兵部隊は漢人で構成されており、部隊長の朱王礼は百戦錬磨の武人であった。王礼は、西夏の持つ軍隊には他にも多国籍の民族、西夏の皇太子・李元昊が部隊を視察に来て、行徳が教養のあることを見抜きます。西夏軍とウイグル軍が激突し、西夏軍が勝ちますが、その最中、行得はウイグル族の王女・ツルピアを助けて匿い、愛し合うようになります。しかし、行徳は李元昊から西夏語と漢語の辞書の作成を命じられ、3年が過ぎてしまい、その間に、李元昊はツルピアを妃にしようとして、彼女は城壁から身を投げて死んでしまいます。

身の危険を感じた行徳は敦煌に逃れます。敦煌の太守・曹延恵は、行徳を含む夏文字を理解する者を集めて仏教の経典の翻訳を命じます。敦煌郊外に石窟寺院。莫高窟を見た行徳は無数の石仏に魂を揺さぶられます。そこへ、李元昊の大軍が攻め込んで来ます。共にやって来た王礼の傭兵部隊は曹延恵と結託して反乱を起こしますが失敗し、敦煌は火の海に包まれます。行徳は仲間と共に重要な経典や文書を運び出して莫高窟の祠に隠匿します。

>それから900年後、莫高窟で4万点を超す文献や経典、絵画が発見され、世界に衝撃を与えたが、ほとんどが欧米や日本の調査隊に持って行かれ、中国には1万点しか残っていなことが大滝 秀治のナレイションで語られます。

 

昊高窟で発見された多くの歴史的資料は誰が隠したのかは現在でも不明ですが、原作者の井上靖は現地を訪れて着想し、科挙に落ちて失望して西域に向かった青年と彼の仲間の僧侶たちと設定し、そこに恋を絡ませています。壮大な物語で、現地中国の協力なくしては出来なかった“大作“ですが、演出がだらだらしていて、いまいち迫力がありませんでした。合戦シーンも大がかりですが、焦点が定まらす二円炎と続いて飽きが来ました。もっと主人公たちに焦点を絞って120分程度にまとめれば良かったと思いました。折角の良い題材を大金を費やして制作したのに、もったいない出来上がりでした。演出の拙さが、折角の好材料と大金を無駄にしてしまいました。この映画のせいだけではないでしょうが、バブル経済がはじけて制作した徳間書店も崩壊したようです。