<アンダー・ファイア(Under Fire・米・1983)> ★★★☆

 

 

 

 

ニカラグアは、中央アメリカ中部にあり、東はカリブ海、南西は太平洋に面しています。1936年から続いていたソモサ家独裁への国民の反発は1970年代に頂点に達し、武装蜂起したサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)は国民の幅広い結集を受け、ラテンアメリカ諸国と国際社会を味方につけ、1979年7月ソモサ・デバイレ大統領は米国マイアミに亡命して43年間におよぶソモサ王朝は終焉します。この騒乱を、取材するアメリカのジャーナリストの目から描いています。

 

>アフリカ・チャドの軍事紛争を取材したフォト・ジャーナリストのラッセル・プライスは、友人であり先輩でもあるアレックスが本国のTVのニュース・キャスターに転じるアレックスの後任として、ニカラグアの騒乱の取材に赴きます。チャドでの紛争に関するアレックスの記事は、ラッセルの写真と組み合わされ、タイム誌のカバース・トーリーになっていました。アレックスには女性記者のクレアという愛人がいますが、彼女は本国帰還を拒否して残ります。ラッセルは、ソモサと密接な関係にあるフランス人マルセルと出会い、反乱軍の指導者はラッセルという男であるが、誰も彼を見たことがないと聞き、彼を見つけて取材することを決意しますが、クレアも彼に同行して危険を顧みず密林の奥へ進みます。数日後、ソモザ大統領がラファエルは殺害されたと発表します。二人は反乱兵の手引きで人里離れた反乱軍の拠点に導かれ、ラファエルの遺体に会います。反乱軍の指導者は、兵士の士気を高めるため、ラッセルにラファエルが生きていて2人とのインタビューに応じたとする偽造写真を発表するように要請します。ラッセルとクレアは真実を伝えなくてはならないジャーナリストとして葛藤するが、大統領の独裁に抵抗する反乱軍に賛意を持って来た2人に同意します。写真は世界に流れ、ラッセルは政府側から追われることになります。アレックスもニカラグアに来てラッセルと再会します。2人がホテルに戻る途中で道に迷って、アレックスは政府軍の兵士に道を聞こうとしますが、兵士は彼を射殺し、その瞬間を撮っていたラッセルも追われて傷を負いながら逃走し、地元の女性に匿われます。政府軍兵士が高名なアメリカ人ジャーナリストを殺害したことが明らかになれば、アメリカが激怒して政権が終わることを悟ったソモサ大統領は、反乱軍がアレックスを殺害したと発表します。しかし、クレアの努力で、ラッセルの写真は世界中に放映され、ソモサはマイアミに逃亡します。反乱軍が勝利したことで、クレアとラッセルは再会してニカラグアを去ります。

 

かつて、キューバで革命が成功して共産主義国家が成立し、それが中南米各地に蔓延するのを恐れたアメリカが,時の政権に異常に肩入れした結果、独裁政治と腐敗政治が広がってしまいました。「50年前に政府軍がアメリカ人記者殺しておけばよかった」という反乱軍将校のセリフは、そうすれば、アメリカは時の政府に反発して、異常な肩入れをせず、今の独裁政治にもならなかっただろうという苛立ちをうまく表現していました。

 

詳細には描かれていませんが、主人公はチャド取材でも政治の腐敗を目撃して来ているので、ニカラグアにやって来て、当初は中立の立場で撮影取材をしようと心掛けていますが、次第に反乱軍というよりも反政府勢力に肩入れするようになってしまいます。そのあたりの心境の変化はうまく描かれていました。ただ、ただ、ハリウッド映画らしく、そこにラブ・ストーリーを詰込み過ぎて、緊迫感が薄れてしまったように感じました。