<触 手 (La region salvaje・メキシコ/フランス・2016)> ★★★☆

 

 

 

比較的珍しいメキシコ映画で、「“究極の快楽”をもたらす怪物の恐怖を描いたSFエロティックスリラーで、美しい映像や独特の世界観などが各国の映画祭で話題を集めた」.と紹介されており、第73回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した作品ということで、期待を持ってAmazon Primeで見ました。原題<La región salvaje>をGoogleで訳してみたら「野生地域」だそうです。

 

>若い母親アレハンドラは夫アンヘルのDVに悩まされながらも、夫の母親の営む菓子工場で必死に我が子を育てています。ところが、アンヘルは両刀使いで、アレハンドラの弟で看護師のファビアンとホモ関係を結んでいます。ある日、ファビアンは、わき腹に噛み傷を負って治療にやって来たベロニカと知り合い、弟を通じてアレハンドラは彼女と仲良くなります。ファビアンはアンヘルに不倫関係を断つことを告げますが、その翌日、ファビアンは全裸の瀕死状態で発見され、アンヘルが犯人として逮捕されます。アレハンドラは夫の不倫相手でもあるファビアンが回復の見込みのないことを知って、治療器具のコードを外してしまいます。アレハンドラの悩みを聞いたベロニカは、彼女を森の奥の老夫婦の住む薄暗い屋敷へ案内します。そこにいたのは、タコのような触手を持つ巨大な生き物(エイリアン?)で、彼女にかつてない快楽を与えます。実は、ファビアンもベロニカに連れられて来た後に被害にあったのでした。母の差し金でアンヘルは釈放され、アレハンドラに復縁を迫って暴力を振るいますが、膝を刺されて倒れます。アレハンドラはアンヘルを車で森の一軒家へ連れて行きます。老夫婦は留守で、ベロニカが全裸で死んでいました。アレハンドラはアンヘルをエイリアンに預けます。外出から戻った老人は、アレハンドラに手伝わせて、アンヘルとベロニカの死体を庭の一隅の深い穴に投げ込みます。そこには沢山の死体が横たわっていました。・・・・・素知らぬ顔を幼稚園へ息子たちを迎えにゆくアレハンドラの姿がありました。

 

90分の中編ですが、約70分は延々と3人の不倫関係とベロニカの絡みが続き、漸く本題に入りますが、快楽と同時に死をもたらすエイリアンの登場は数分に過ぎず、何だ、こりゃ?と思いました。映画の主題は、人波外れた快楽は同時に破壊をもたらす、と言うことだとは思いましたが、なんとも呆気ない結末でした。R-15指定になっていますが、セックス・シーンは僅かで、SFともホラーともつかない奇妙なムードに若者が惑わされないためだと思いました。ベネチア映画祭では、学識のある批評家先生たちが、或る意味,性の快楽と破滅を哲学的に描いたとして賞賛したのかも知れませんが、なんとも期待外れの作品でした。ただ、部分的には美しい自然の映像が印象に残りました。