<阿部定 最後の七日間 (日・2016)> ★★★☆

 

 

昭和11年に起きて、後世まで猟奇事件として語り継がれる“阿部定事件”を、元アダルト女優の愛染恭子が、定自身の供述や彼女なりの解釈で、定の取り調べの様子を挟みながら、情交シーンをたっぷり入れて、愛人との最後の7日間を描いた作品でR-18指定になっています。

>二・二六事件の衝撃がまだ醒めやらぬ昭和11年5月、料亭の住み込み女中・阿部定は、その料亭の主人・石田吉蔵と情交を続けていましたが、一週間前、絞殺して、遺体の局部を切り取ったという嫌疑で、警察の取り調べを受けています。刑事の執拗な訊問に、定は犯行について是認も否認もしませんが、やがて吉蔵の死と、その死体から局部を切り取るまでのいきさつを自供します。生来、不幸な人生で、娼婦の道しかなく、その時に客として知り合った“先生”から、小料理屋の開店を勧められ、料理見習いに吉蔵の店で働き始めましたが、やがて、吉蔵と深い関係に陥り、待合(今のラブホテル)で情交を繰り返しましたが、やがて異常な性愛に進み、互いに首を絞め合って快感を呼ぶようになります。吉蔵も貞に惚れこみ、店をないがしろにして、待合から支払いを請求されるようになります。

ある日、例にようって、貞は吉蔵の六尺褌で互いの首を絞め合いながら情交中、吉蔵は心臓発作を起こして死んでしまいます。貞は彼と離れないため、彼の局所を切断して逃走しましたが、すぐに逮捕されて警察の尋問を受けているのでした。すべてを語った貞は、晴れ晴れとした表情で、写真撮影に応じます。

 

元アダルト女優の愛染恭子の出演作品は見たことがありませんが、監督作品としては、以前、永井荷風の原作を翻案した<新釈 四畳半襖の下張り>を見たことがあり、同じような作風だろうと思って、期待せずに見ましたが、正にその通りでした。映倫を通過しただけに、セックス・シーンは何度もありますが、それほど露骨ではなく、モザイクをかけたのは1~2か所だけでした。

 

主演の麻美ゆまという女優はなかなか魅力的で、特に情交時の目の動きに感心しましたが、相手役の男優は、なんで阿部定がそんなに惚れ込んだのか判らない凡庸な役者でした。愛染恭子監督作品なので、当初から高い芸術性は期待していませんでしたが、阿部貞が、この映画では、情交中に心臓発作を起こして死んだということに断定していますが、それ以前に、出刃包丁を所持するような気持になったのか、セリフだけで語られ、彼女の心の中の動きがいまいち描ききれていませんでした。

 

映画では描かれていませんが、彼女は懲役6年の刑を受け、1941年(昭和16年)に釈放され、自らの料亭を開くなどしていましたが、1971年(昭和46年)に失踪して行方不明となり生死不明だそうです。