<戦火の勇気 (Courage Under Fire・米・1996)> ★★★★

 

 

湾岸戦争を扱った映画は沢山ありますが、この映画は、自身が心に深い傷を負っているのに、その戦争で死んだ女性将校が叙勲に値するか否かの調査を命じられて苦悩するという変わった視点で描いています。主人公をデンゼル・ワシントン、女性将校をメグ・ライアンが演じています。

 

>湾岸戦争で戦車部隊指揮官のサーリング中佐は、夜間の激しい戦車戦で、敵味方の識別をするために自軍戦車に点灯を命じます。点灯していない1台を狙撃爆破したところ、それは自軍の戦車で、部下を殺してしまいます。上層部はこの事件を隠蔽し、心に深い傷を負った彼を、名誉ある戦死者への叙勲の可否の調査係に配置転換します。その最初の任務が、負傷者救援ヘリが狙撃されて、敵の陣中に墜落して戦死した女性大尉ウォールデンが、名誉勲章を受けるにふさわしい軍人かどうかの調査でした。大統領府は、女性初の名誉勲章となるため、国民に向けて格好の宣伝になると考えて叙勲を推しています。

サーリング中佐は同じヘリに乗っていて救助されたクルーから聞き取りを始めます。することに。最初のパイロットのレイディーは、操縦中に攻撃を受け負傷し、救助されて野戦病院で目覚めたのは3日後なので、大尉の最期は見ていないと言います。彼はその後、病院を脱走しますが、癌を発症して死んでしまいます。2人目の衛生兵のイラリオは、大尉は負傷しながらも、毅然として指揮をとっていたが、救助ヘリ到着の直前に被弾して死亡したと答えますが、サーリングは何か隠していると直感します。3人目のモンフリーズは、ウォールデンは臆病者で救援隊を待つことばかり考え、救援ヘリが到着した時も、敵の攻撃中を走るのは怖いとその場に留まって死んだ、と語ります。サーリングはモンフリーズが嘘をついていると詰問すると、突然ピストルを彼に向けた挙句、列車に飛び込み自殺してしまいます。さーリングは軍に無断離隊して実家にいるイラリオを再訪して詰問します。彼はやつれ切った表情で真実を語り始めます・・・・

 

事件を目撃した3人の証言がそれぞれ異なると言うのは、黒澤明の<羅生門>を想起させられました。人間の記憶なんて曖昧だったり、自分の都合の良いように受け取ってしまうのは、古今東西変わらないようです。ただ、この映画の場合は、真実が明確になり、ウォールデン大尉は受勲に値することが決まり、サーリングも気分がはれてすっきりして、ハッピー・エンドとなります。

 

戦闘シーンは、冒頭のサーリングの事故と、3人の証言の中で随時挿入されますが断片的で、戦争アクションを期待すると失望すると思います。それだけに、二三不審な点はありましたが、登場人物の心の揺れをじっくりと描いていて、見ごたえがありました。