<明日に向かって笑え!(La Odisea de los Giles・アルゼンチン・2019)>★★★☆

ほし

 

昨年、アルゼンチンでは大統領改選が行われ、自国貨幣のペソを廃止して米国ドルにすることを主張した候補者が当選しました。アルゼンチン人は以前から自国貨幣を信用していなかったことがこの映画からも判りました。2001年に債務不履行に陥ったアルゼンチンを舞台に、金融危機で大切な資金を詐取された村人達が結束して取り戻す姿を描いたコメディです。<明日に向かって撃て>をパクったような邦題ですが、原題は“愚か者たちのオデッセイ”と言うよう意味らしいです。何人か集まると、他人の話を聞かずに自分の意見をまくしたてる国民性も皮肉っぽく描いていました。

 

>2001年12月3日。財政危機に陥ったアルゼンチン政府は、国民の銀行からの引き出しを封鎖しました。それより前、アルシーナ村では村人が農協を立ち上げるために、それぞれがなけなしのお金を提供して共同資して街の銀行に預けていました、弁護士のマンシーはアルバルド支店長からいち早く預金封鎖の情報を知って。その資金を引き出して米ドルに換えて、村はずれの牧草地の地中に警備設備の完備した金庫を埋めて素知らぬ顔をしていました。しかし、村人はそれを知って奪われた金を取り戻そうと立ち上がります。元サッカー選手のファミナンはマンシーに掛け合いに行きますが追い返され、帰路に事故に遭遇して同乗していた妻は亡くなってしまい、彼も重傷を負います。一年後、彼の息子ロドリゴは植木職人と偽ってマンシーの家に入り込んで金庫業者の所在を知り、彼を訪れて警備装置の仕掛けを聞き出します。ファミナンと共同出資者の自動車修理店のアントニオ、駅長のロロ、運送会社の女社長カルメンとその息子エルナンなどと議論を戦わせ、金庫侵入を図りますが防犯装置が作動して失敗します。しかしくじけず、逆に電線を操作して立て続けに警報を鳴らし、マンシーをノイローゼに陥らせ、警報装置の遮断をさせてしまいます。嵐の夜、ファミナン達は手分けして変電所を爆破して停電させ、周辺一帯が混乱に陥っている最中に金庫破りに成功します。マンシーが異変に気付いて地下倉庫に駆けつけた時には後の祭りでした。マンシーは村人の出資金以外にも莫大な金を詐取して隠蔽しており、悪事で得た金なので諦めるしかありません。村人たちは出資金を取り戻して農協も発足、余剰金は慈善団体に寄付します。エンドクレジットが終わってから、マンシーが自動車修理にアントニオの店を訪ねると、アントニオは紙コップのマテ茶の中に彼の小便を入れて差し出し、マンシーがそれをうまそうに飲んでしまうオチがついていました。

 

個性の強い村人たちがそれぞれの技術や知恵を出し合って奪還計画を練り上げていきますが、その会話が如何にも南米的で笑わせられました。それぞれの個性がはっきり出て居て判り易い群集劇でしたが、ファミナーが元サッカー選手と言う設定はあまり意味がありませんでした。彼の息子のロドリゴがマンシーの秘書にほのかな恋心を示す他には色っぽいエピソードは一切入れず、資金奪取の悪戦苦闘を描いていてだれるところがないのも好感を持てました。この映画では、警察に相談するという意見は一切出ず、国民が行政を信用していないことが推察出来ました。唯。自分たちの金を取り戻すためとはいえ、公共施設である変電所を爆破して電気を止めてしまったことは重大な行き過ぎなのに、その処罰については一切触れていないのは、いくら金融危機最中にしても不自然に思いました。

 

実は、見始めて暫くして以前見たような気がして調べたら一昨年の暮れに見ていました。記憶の薄かったのは内容的に軽く頭に残っていなかったのでしょう。