<4人の女(Solo Quiero Caminar・スペイン/メキシコ・2008)>★★★☆

 

 

スペインとメキシコを舞台にした4人の女窃盗団と現地マフィアの抗争を描いていますが、派手な銃撃戦やカー・チェイスはなく、フィルム・ノワールと言った感じのスタイリッシュな作品でした。原題は直訳すると”ただ歩きたいだけ”で意味不明でした。

 

>スペインでアウロラとアナの姉妹、シングル・マザーのグロリア、パロマの4人組は窃盗のプロ・チームですが、宝石店の金庫破りに失敗して、逃げ遅れたアウロラは逮捕されてしまいます。アナは表向きは娼婦をしていますが、メキシコの麻薬ディーラーのフェリックスに気に入られて結婚し、メキシコに移り住みますが、フェリックスの秘密を握って大金奪取を企み、スペインからグロリアを呼び寄せますが、実行前に車中で夫と口論になって車から突き落とされ意識不明の重体になってしまいます。パロは色仕掛けで刑務官を籠絡してアウロラの釈放種に成功して2人はメキシコへ渡ります。3人はアナの復讐と麻薬資金強奪を計画しますが、フェリックスはこれを察知して、“ベビー・フェイス”の渾名を持つ殺し屋ガブリエルにオーロラ達の動きを監視させます。しかし、ガブリエルは女3人を殺すことに反発するどころからアウロラに好意を抱き始めます。フェリクスが中国マフィアとの取引で大金を用意したのを察知した3人組はその奪取を企てますが発覚し、グロリアが重傷を負って息子の世話をパロマに頼んで息絶えます。アウロラはフェリクスに追い詰められて殺されるところをガブリエルが駆け付けて救出しますが、フェリクスは重傷を負います。フェリクスは傷を隠してアウロラに愛を打ち明け、彼女を逃します。去って行く彼女を見送りながらガブリエルは息絶えます。

 

か弱い(そう見える)女性だけで重いドリルやハンマーを使って壁や床をぶち抜いて簡単に金庫破りをする、ということ自体、ちょっとあり得ないと思いますし、スペイン語のセリフでは確かに“韓国人”と言っていますが麻薬の取引相手は中国語を話している、死んだグロリア以外の3人の女のその後の消息も明らかではない、等々全体にかなりおおまかでいい加減なところが目立ちました。しかし、ストーリーの展開が早いのとスタイリッシュな映像が続くのでついつい見入ってしまいました。4人の中で一番美形のアナは前半は出番が多いですが、後半は植物人間としてベッドに横たわって殆ど現れず、残りの3人はスペイン女優としてはそれほど魅力的には見えませんでした。むしろ、一番印象に残ったのは、殺し屋ながら女と子供は殺さない主義の“ベビー・フェイス”の渾名がピッタリの甘いマスクのガブリエル役のディエゴ・ルナでした。もっとも、そんな彼の性格を良く知っていながら、3人の女の抹殺を頼むフェリックスの見識の無さもこの映画のいい加減さの一つでした。

 

ガブリエルがフェリックスに盾つくようになったのは、アウロラに惚れ込んだだけでなく、彼女の妹のアナをDVで植物人間にしてしまったフェリックスに反感を抱いたせいと思いましたが、その辺りの彼の心理描写がいま一欠けていました。女達が近所の空き家からトンネルを掘って金庫室まで潜入するサスペンス感や事の運びのスピード感で約2時間を見てしまいましたが、見終わってみるとこれと言って残るもののない作品でした。