<FUNAN フナン・仏/カンボジャ・2018)> ★★★★☆

 

 

 

カンボジアはかつてはフランスの植民地でしたが、独立後の1970年代、カンボジアの極左組織「クメール・ルージュ」は自らをオンカー(「組織」)と呼び、腐敗した旧勢力を粛正しましたが、農村の食糧生産はすでに疲弊していて国民は飢餓状態にありました。食糧増産を図ろうとした指導者のポル・ポトは都市文明を否定して、プノンペンなど都市の住民、資本家、技術者、知識人などから一切の財産・身分を剥奪し、農村に強制移住させ、都市をゴーストタウンにしました。学校、病院、工場も閉鎖し、銀行業務どころか貨幣そのものを廃止し、私有財産と宗教を禁止しました。オンカーはポル・ポトが極端な重農主義・農本主義を強行しました。この映画(アニメ)は、1975年、カンボジアの若い夫婦がクメール・ルージュに強制的に連れ去られたわが子を探す物語です。タイトルは、かつて現在のカンボジアを含むインドシナ半島に存在した国家、扶南(フナン)国に基づいているそうです、

 

>クンとチョウの夫婦は幼い子どものソヴァンやそれぞれの身内と一緒にプノンペンで暮らしていましが1975年、クメール・ルージュは政権を打倒し、チョウ一家は強制退去を命じられます。私物はすべて没収され、過酷な移動の最中、ソヴァンと祖母は家族とはぐれてしまいます。或る村に辿り着くと、チョウの従兄のソクが革命軍の一員になっていることを知ります。僅かな食料で、男は土木作業に、女は畠仕事に酷使されますが、ソクから別の村に祖母とソヴァンがいることを知らされますが、引き取りに行くことは許されません。クンの弟メンは脱走を図って殺されます。クンは密かにソヴァンを探しに出ますが発見されて殺されかけます。ソクはクンを助けるためにその兵士を殺しますが、ソクは裏切り者として他の兵士に殺されてしまいます。男と女は別のキャンプに送られて、二人は引き離されます。2年が過ぎ、クンは痩せ衰えたチョウを診療室で見つけて再会します。カンボジア・ベトナム戦争が始まり、ベトナム軍の攻撃の隙に2人は脱出し、ソヴァンを探し出しますが、祖母は亡くなっていました。3人はタイへの越境を図りますが、国境付近で偵察に出たクンはクメール・ルージュの兵士に見つかってしまいます。クンは2人が国境を超えられるよう、わざと逃げて射殺されてしまいます。チョウとソヴァタイに入ります。

 

クン一家が大家族なうえ、登場人物が多く、聞き慣れない名前ばかりなので、相関関係を理解するのが大変でした。監督がカンボジア出身で、母の身の上を映画化したというので、壮絶な展開は事実通りで、実写映画にするにはあまりに悲惨で、アニメにしたのが救いでした。それにしても、中国における文化大革命でも多くの知識層や富裕層が弾圧されましたが、現代のIS等のイスラム原理主義者などの洗脳された狂的な集団の恐ろしさを改めて感じました。最後に、クメール・ルージュによって170万人が難民となり、50万人が虐殺されたとテロップが流されます。アニメなのに、見終わって悄然となる作品でした。