<マルリナの明日(Marlina the Murderer in Four Acts・インドネシア/仏・2019)> ★★★★☆

 

 

AmazonPrimeで紹介文を見て、何処の国の映画か知らずに見たら意外に引き込まれ、80分と言う長さもあって一気に見てしまいました。見終わってから、改めてネットで見たら、インドネシアとフランス、マレーシアなどの合作で、2017年・第18回東京フィルメックスのコンペティションで最優秀作品賞を獲得した作品で、道理でと思いました。映画は英題とおり、4幕構成となっています。

 

第1幕:マルリナは荒野の一軒家に住み、牛、豚、羊、鶏を飼育しています。夫は亡くなりますが、遺体はミイラになって部屋の片隅に置かれています。或る夕方、首領のマルクスと7人の強盗団に襲われ、家畜はすべて失われ、2人の手下がトラックで連れ去ります。残りは食事を要求します。マルレナは男たちに毒入りのスープを振る舞い、男たちは死んでしまいます。別室のベッドで寝ていた首領のマルクスは彼女をレイプしようとしますが、彼女は山刀で彼の首を切り落としてしまいます。

第2幕:マルリナは、自らの正当性を証明するため、落とした男の頭を持ってはるか遠く離れた町にある警察署に向かいますが、途中で出産間際のノヴイと道連れになります。彼女は妊娠以来よりつかない夫のウンブに会いに行くところでした。2人は、トラック・バスに乗って町に向かいますが、途中で家畜を輸送していて死を免れた強盗団の他の2人が首領と仲間の死を知って、マルリナを追いかけて来ます。彼らはバスを捜索しますが、たまたまマルリナは離れて所用中で、近くにいた馬に乗って逃げ去ります。強盗団の2人は仲間割れして、フランツ一人になります。彼はマルリナとノヴィの仲を知ります。

第3幕:彼女は地元の警察署に到着し、事件の一切を報告しますが、警察はレイプ検査機器が到着するまで1カ月はかかるので、それまでは捜査は出来ないと言われて、警察を去ります。

第4幕:ノヴイはウンブに会いますが、彼は腹の赤ちゃんは不貞の結果だと彼女を殴り倒します。フランツがそれを見て彼女を脅してマルリナを我が家に誘い戻します。3人は家で会い、フランツはマルリナからマルクスの頭を奪い取り、彼の胴体と合体させ、ミイラ化したマルリナの夫のそばに置きます。ノヴィが強要されて彼のためにスープを調理している隙に、彼はマルリナをレイプしますが、ノヴィが彼を殺してしまいます。衝動で、彼女は破水し、マルリナの手助けで無事出産します。翌朝、マルリナと赤子を連れたノヴィは家で去って行きます。

 

マルリナもイヴィも携帯電話を持っているので、20世紀後半以降の物語だと思いますが、荒涼たる原野やその中の一軒家、町と言えないような集落とのんびりした警官(=シェリフ)などは、正にハリウッドの西部劇の舞台でした。それに、夫の遺体をミイラにして部屋に置いておく妻と言うのには驚きました。

 

レイプ犯を惨殺し、生首を持って平然と歩くマルリナの強さと対照的に、かまってくれない夫に遠路を哀願しにゆくイヴィと、2人の対照的な女性が印象的でした。現代のインドネシアにおける男尊女卑問題の一端を描いているのは女性監督ならではでした。6人の荒くれ者たちに囲まれては、どうしようもないとき、咄嗟に毒スープを作って手下に飲ませ、ボスには言いなりになると見せかけて首を切り落とす機知の強さを示すマルリナを演じた女優は好演でした。手下どもの死体はどうしたとか、多少、ツッコミどころのある作品でしたが、掘り出し物の一品でした。