<アレクサンドリア (Agola・スペイン・2019)> ★★★☆

 

 

 

 

邦題の"アレクサンドリア"は、カイロに次ぐエジプト第2の都市ですが、ギリシアのアレクサンドロス大王によって、紀元前332年に建設され、その死後は、その部下だったプトレマイオス1世がエジプトを支配し、古代エジプト最後の王朝の首都として発展しましたが、この映画の背景はローマの統治下にはいった西暦390年代になっています。原題の”Agola”は古代ギリシャの都市の中心広場を意味し、この映画でも登場はしますが、内容を的確に表しているようには思えず、ずばり場所の名前の邦題の方がまだましだと思いました。スペイン映画で、スタッフの多くはスペイン人のようですが、主演俳優は非スペイン系、クレジットもセリフも英語でした。

 

>西暦391年、ギリシャの女性哲学者ヒュパティアは将来のアレクサンドリアのプラトニック学校の教師を務めています。彼女の父はアレクサンドリア図書館の館長であるテオンです。父親の奴隷であるダヴスと教え子のオレステスの二人がヒュパティアに好意を寄せており、彼女はそれを無視しています。

テオンはエジプト古来の多神教を信じ、ヒュパティアは信仰に無関心でしたが、統治国のローマからキリスト教が伝わって信者を増やし、エジプト古来の多神教を異教として弾圧を始めて暴動騒ぎとなります。数で劣る”異教徒”たちは破れ、テオンは重傷を負い、オレステスたちは図書館に引き籠ります。父の体を案じたヒュパティアも同行します。ローマ皇帝テオドシウス1世の命令で、異教徒は赦免されますが、図書館は占拠されます。ヒュパティアや学生たちは、特に貴重な文書を抱えて退去します。自宅に戻ったヒュパティアに奴隷のダヴスは強引にキスを迫りますが、途中で思い留まりすすり泣きを始めます。彼女は彼の奴隷の首輪を外し、彼が自由の身になったことを伝えます。数年後、キリスト教に改宗したオレステスはアレクサンドリアの知事になっていますが、唯一神への信仰を明確に示さないため、民衆の攻撃を受けて怪我をします。アレクサンドリアではキリスト教徒とユダヤ教徒との対立も激しくなりますが、ヒュパティアは天文学の研究に没頭し、異端とされている地動説に同調します。キリスト教徒の指導者のシリル大司教はヒュパティアが“魔女”であることを宣言し、暴徒は彼女を生きたまま皮を剥ごそうとしますが、ダパスは彼女を石で打つことを提案し、暴徒が石を集めるために外に出たとき、彼女の絞殺して石で打たれる苦痛から解き放して去って行きます。

 

ユダヤ系イギリス人の女優レイチェル・ワイズの演じるヒロインのヒュパティアは、東ローマ時代のエジプトで活動したギリシャ系の数学者・天文学者・新プラトン主義哲学者ヒュパティア(350年から370年頃 - 415年3月)は、東ローマ時代のエジプトで活動したギリシャ系の数学者・天文学者・新プラトン主義哲学者としてWikipediaに紹介されている実在の人物で、暴徒に殺害されたことも事実のようですが、残された資料は極めて少なく、この映画もフィクションがかなり混じっていると思います。演じるワイズは美貌と知性を兼ね備えた学者として適役でしたが、何年たっても一向に老けないのは不思議でした。

 

それにしても登場人物が極めて多く、名前もシュスシオス、アンモニオス、アスパシウス・・・・と覚えられないような複雑なのが多く、人間関係で理解に苦しむシーンもたびたびありました。建物のセットも壮大、エキストラも多く、古代アレクサンドリアの隆盛さを偲ばせました。