<テーラー 人生の仕立て屋)(Raftis/Taylor・ギリシャ・2020)> ★★★★☆

 

 

AMAZON Primeで見た珍しいギリシャ映画で、父の代からの高級スーツ仕立店の寡黙で独身の中年男が、滞納による店の差し押さえを機に、屋台での営業を始めますが客がつかず、たまたま頼まれて、隣家の人妻の応援を得てウェディング・ドレスを作ったことから評判となり、彼女の作った婦人服やウェディング・ドレスの専門屋台となりますが、その間に男女の仲も深まってしまうという内容です。

 

>アテネで40年近く高級スーツの仕立て店を父と営んできた50歳のニコスは商売柄、常に三つ揃えのスーツにネクタイ姿で、独身で寡黙な性格で、始終上目使いで相手を見る内気な男です。時代の変遷で注文は減ったところを不況がギリシャを襲い、店は債務不履行で銀行に差し押さえられて移動式の仕立て屋を始めますが一向に客が来ません。父は息子が露天商になったと憤慨した挙句、体調を崩して入院してしまいます。そんなある日、ウェディング・ドレスの注文を受けて引き受け、隣家のタクシー運転手子スタスの妻で洋裁の心得のあるオルガの応援を受けて完成し、オルガ共々出席しますが、彼の作ったウェディング・ドレスが評判になり、次々に注文が舞い込みます。又、オルガの作った婦人服も一緒に並べたところ人気を博してよく売れます。しかし、その間にニコスとオルガの仲はどんどん深まり、一線を越えてしまいます。夫のコスタスも2人の仲を疑い始めます。そんな折、店はとうとう差し押さえられてしまい、父は施設に入所することになります。オルガ一家の家庭を壊さないため、ニコスは屋台付きのトラックを買い入れ、「ウエディング・ドレス ニコス・カラリス」と大きく書きこんだキッチン・カーならぬテーラー・カーに乗って町を去って行きます。

 

主人公のニコスが極めて口数が少ないため字幕も少なく、その分、彼の表情や細かい動作が良く見られましたが、常に正面から対象を上目遣いで見る内気な性格ですが、隣家の小さな娘との交友の時だけは面と向かって明るく話します、母のオルガとも最初は上目遣いで話していますが、ついにはじっと見つめ合うまでに発展し、2人の仲をうまく表現していました。また、セリフが少ない部分、内容に即したBGMもうまく使われていました。

 

ウェディング・ドレスの成功で金を蓄えて借金を返済して店を取り戻してハッピー・エンドに終わるのかと思って見ていましたが、これはこれで他人を不幸にしないもう一つのハッピー・エンドでした。

 

コメディともヒューナン・ドラマともつかない作品で、アクロポリスなどの史跡は一切出て来ませんが、アテネの裏町や庶民の生活ぶりや売買の風習などがさりがなく描かれていて、結構楽しめました。

 

日本でも同様ですが、人々の傾向は品数が多く安価な既製服に集中して、高価なオーダー・メイドは敬遠されるようになり、経営の苦しさは理解出来ます。