<エデンの東 (East of Eden・米・1956)> ★★★☆

 

 

ジェイムズ・ディーンの名前を一躍世界に広めた、スタインベックの原作をエリア・カザン監督作品の

デジタル・リマスター版がNHK-BS2で放映され、何重年ぶりかで見ました。70年近く前の作品ですが、旧約聖書の「カインとアベル」の説話をベースにしていて、アダムとイヴがエデンの園を追われた後に生まれた兄弟で、

カインは農業を、アベルは牧畜を営みますが、2人が収穫物を神に捧げると、神はアベルの供え物だけを喜んで受け取り、カインはアベルを憎んで殺し、エデンの東へと去って行きます。この映画でも、兄弟の相克が描かれていますが、殺人事件にまでは発展しません。

 

>917年、カリフォルニア州サリナスで。キャルは銀行帰りの女性の後をつけて彼女の自宅まで入り込みます。キャルは、父親アダムからは死んだと教えられている母ケートではないかと問い詰めますが、使用人につまみ出されてしまいます。彼女は隣町のモントレーで売春宿を経営しています。キャルにはアーロンという兄がいますが、気が合わず不仲です。父も謹厳なアーロンを溺愛し、放埓なキャルには冷たく当たります。アーロンにはアブラと言う恋人がいますが、キャルの父のレタス農場を経営していますが、レタスの冷凍販売を思いつき、キャルも協力しますが、輸送列車の事故で大損をしてしまいます。第一次大戦が勃発し、大豆相場が高騰すると聞いたキャルはケートに頼み込んで得た元手で大豆の先物投資をして大儲けし、父親の誕生日に贈り物として自分も関与して責任を感じていた父の損失分を差し出しますが、堅物の父はそれを不浄な金だと受け取らず、キャルは落胆します。アーロンはキャルとアブラの仲を疑い詰問します。キャルは、父の言葉を信じて母を偶像化しているので、キャルは彼をケートの店へ連れて行き実像を教えます。アーロンは絶望して軍隊志願して去って行きますが、父はショックで脳卒中で倒れて寝た切りになってしまいます。キャルはそんな父の姿を見て、介護と農場存続のため留まる決意をし、アブラもそれに同意します。

 

息子への説教にも聖書を引っ張り出す父親とその血筋を引いた兄、そんな夫に愛想をつかして怪我をさせて家を飛び出した母親とその血筋を引いて奔放な弟と言う構図がうまく描かれていました。その母はいなくなり、残された3人ですが、父にも兄にも愛されない孤独からついつい放埓な行動をとってしまう、世界のどこにでもいそうな青年を演じて一躍人気スターになったジェームズ・ディーンですが、半世紀以上経た今見ると、それほど魅力を感じませんでした。私の頭脳の老化だけでなく、彼のような青年は今やどこにもいて、むしろ父や兄に違和感を覚えてしまうからだと思います。

 

結末、父は病に倒れ、兄は落ちた偶像へのショックから志願兵になって去って行くのは”信者派”の敗北で、スタインベックやエリア・カザンの宗教に対する考えを象徴しているように思いました。