<タバコ・ロード (Tobacco Road・米・1941)>  ★★★☆

 

 

 <幌馬車>や<黄色いリボン>など西部劇で人気のあったジョン・フォードですが、こういうアマエリカ南部の貧しい農民の姿を描いた作品も残しています。1930年代のジョージア州のかつてはタバコや綿花の栽培で繁栄したのに長年続いた凶作で荒廃してしまった土地に生きる貧しい農民一家の暮らしを深刻ながら人間味のあるユーモアを交えて描いたモノクロ作品です。

 

 タバコロードと呼ばれるこの地域に住む老農夫のジーター一家は、156人いた子供も皆都会へ出て行ってしまって、妻アダと23歳の娘エリー・メイと20歳の息子デュードの4人暮らしですが、8年続く凶作で食物にも困っている上、年間100ドルの地代を払えず、地主のティムも土地を銀行に抵当に入れていて、銀行から追い立てを食っています。近くの家に夫と死別して帰ってきた36歳の女性が戻ってきて、ジーターは彼女が亡の保険金を持っているに違いないと考え、一回りも若い息子のデュードを彼女と結婚させてしまいます。ところがこの2人は所持金800ドルで車を買ってしまい、買うが早いか立ち木に衝突して傷だらけにしてしまったうえ、ジーターが勝手に乗り回して警察に窃盗犯で逮捕されてしまう事件も起きます。ジーターのもう一人の娘ル-シーと結婚していたベンジーが、ルーシーが彼を棄てて都会へ行ってしまったと言いに来て、ジーターはかねてから彼に想いを寄せていたメリー・メイを与えてしまいます。妻と2人きりになったジーターは、遂に土地を離れて救貧農場へ身を寄せる決心をして家を出ますが途中で地主のティムに出会います。ティムは2人に同情して、銀行に地代の半額を立て替え払いしてやり、更に10ドルを与えて、種子や肥料を買って頑張って綿作を再開するよう告げて立ち去ります。

 

冒頭に娘婿のベンジーが妻への不満を父親に嘆きにやって来ますが、飢えていたベンジー一家は彼の話を無視して、彼がもっていた蕪を力づくで取り上げてむさぼり食べてしまう悲惨なシーンが、逆にドタバタ喜劇調に描かれて観客を引き込んでしまいます。更に、常に大声で賛美歌を歌い続くけて周囲を巻き込んでしまう出戻りの女など、貧しいながらも悲壮感のない、むしろ人生を謳歌しているような感じでした。これは、ジョン・フォード監督が彼の作品の西部劇や戦争劇で見られるように、アメリカを愛する国粋主義者で国策に疑問を挟まず、東寺の貧者冷遇という国家施策に疑問を持たず、貧しい者もそれなりに生きているという考えの持ち主だったからと思います。

 

とは言え、全体的に悲惨さの中にもユーモアと牧歌的雰囲気が溢れていて、ハッピー・エンドで終わり、見ていて気分のおおらかになる映画でした。