<恐怖の報酬 (Sorcerer・米・1977)> ★★★★ 

 

 

オリジナルの<恐怖の報酬 (Le Salaire de la peur)>は1953年制作のアンリ=ジョルジュ・クルーゾ監督のフランス映画で、シャンソン歌手だったイヴ・モンタンが出演していましたが、第6回カンヌ国際映画祭にてグランプリとシャルル・ヴァネルが助演男優賞を獲得しています。今回のリメイク作品は日本でも制作早々公開されましたが、何故か大幅にカットされていて、今回はオリジナルのままの完全デジタル・リメイク版とされています。

 

>南米ヴェネズエラのジャングルに囲まれた田舎町ポルベニールには、わけありの連中が集まって来ています。ある日、300キロ離れた山の中の油田で爆発事故が起こります。消火にはニトログリセリンを爆発させてその爆風で消す以外に手立てがありません。しかし、ニトロは少しの衝撃でも爆発する危険物なので、気流の悪い山岳地帯にヘリコプターでの輸送は危険なのでトラック輸送することになり、多額の報酬を条件に運搬者を希望します。その結果、賭場荒らしで組長の弟に重傷を負わせて組織から追われているドミンゲス、不正融資で多額の貸し倒れを出して責任を問われて逃亡中の元銀行家セラーノ、ナチス残党狩りの殺し屋ニーロ、イスラエル過激派グループの爆弾犯で警察に追われて逃亡してきたカセムの4人の男が選ばれます。荷室におが屑を敷き、それぞれ3箱のニトロの入った木箱を積んで2台の超おんぼろトラッは出発します。前途には泥水のぬかるみ、崩落寸前の吊り橋、道を塞ぐ巨大な倒木、山賊などの想像を絶する困難が待ち受けています・・・・・・。

 

南米の密林地帯を舞台に、油田火事の消火のために危険なニトログリセリンを運ぶ仕事を請け負った4人の男達を追うサスペンス映画という構成は変わりませんが、ハリウッド映画らしく、主人公たちの行く手を遮るぬかるみ、豪雨、朽ちた吊橋、倒木などオリジナルにはなかった緊張感を煽るシーンが加えられています。ただ、これでもか、これでもかでスリリングなシーンが続くのにいささかうんざりして、それだったらニトロの木箱を1台でたった3個運ぶだけなら、重い大型トラックなんか使わずに四輪駆動のJEEPのような車で行けば良いのに、とつまらない考えを持ってしまいました。

 

冒頭から20分ほどはヴェラクルス、エルサレム、パリ、ロンドンと変わって、後日選ばれて命を賭けることになる4人の男の来歴が描かれていますが、大型トラックを運転出来そうな者はおらず、何故、石油会社が彼等を選んだのか不思議でした。ただ、カセムが爆弾の専門家だったということは後段の伏線になっていました。何点かの綻びはありますが、本題の危険極まりないトラック輸送のシーンになるとそんな綻びを忘れさせるような迫力がありました。

 

ラスト・シーンではポルベニールの町にドミンゲスを追うマフィアの追手が現れて町の俯瞰となり、一発の銃声が響いて終わりとなります。過酷な任務の途中で3人は死んでしまい、唯一人生き残ったドミンゲスも殺されてしまったと解釈しました。