<父の秘密(Después de Lucía・メキシコ・2012)> ★★★★

 

 

 わが国では学校での陰湿なイジメがしばしばニュースになり、学校側はイジメを認識していなかった、と言訳して有耶無耶に終わってしまうことが多いようですが、この映画でもクラスメイトの悪質なイジメで娘を失った(実際は死んではいませんでしたが)父親が、学校側の煮え切らない態度にキレて娘の貞操を踏みにじり、イジメの原因を作った相手に直接復讐します。

 

>妻を交通事故で失って傷心のロベルトは娘の高校生・アレハンドラ(通称・アレ)を伴って移り住んで来ます。シェフの彼はそこで新しくレストランを始めようとしますが、雇ったコックの腕が悪く、更に、アレが転校時の身体検査で麻薬反応が出て呼び出されたりしてイラついています。アレは級友ともすぐに馴染み、楽しい日々を過ごしますが、金持ちの息子でクラスの人気者ホセに級友4人と共に彼の別荘に招かれます。その夜、大麻と酒の乱痴気騒ぎの末、成り行きでホセと関係を結んでしまい、その一部始終をホセが携帯の動画で撮影していて、仲間に見せたことから学校中に噂が広まってしまいます。ホセの恋人を自認していたカーラは特に激しく嫉妬して、級友を煽動してアレの髪を切ったり、塩を入れたケーキを無理矢理口に押し込んだりと激しいイジメが始まります。学校側は見て見ぬふりをし、アレはイラついている父に相談することも出来ません。臨海学校が始まり、アレもいやいや参加しますが、宿泊先のホテルの部屋でトイレに閉じ込められた彼女は男子生徒に輪姦されたうえ、夜の海へ追い込まれてしまいます。アレはそのまま姿を消してしまいます。学校からの知らせで初めて、娘がイジメにあっていたことを知ったロベルトは級友を詰問しますが、皆、素知らぬふりをします。アレは実は戻って来て絶望して、かつて住んでいた空き家に戻っていたのですが、父にも知らせずにいたのですが、妻に続いて娘までも失ってしまったと思ったロベルトの怒りが爆発し、イジメの原因を作ったホセを待ち伏せして連れ出し、娘が消えた海へ連れて行き、ボートを借りて沖へ出てホセを海に投げ込んで帰路につきます。

 

アレも大麻を吸ったりワインをガブ飲みしたりして決して真面目な少女ではありませんが、級友たちの乱れ方はそれ以上で、すべてではないにしてもメキシコの高校生はこんなにひどいのかと思ってしまいました。そんなアレもただ一人の肉親である父親が悩んでいる姿を見ると、相談も出来ず、家では健気にも無理に快活を装っている姿が痛々しく可哀想になりました。必死にイジメに耐えているとイジメは更にエスカレートし、遂には生命の危機にさえ達します。幸いにも死を免れたものの、アレはそれを父に報告もせず、その結果、父は殺人という重罪を犯すことになってしまいます。

 

監督が訴えたいのは、コミュニケーションの大切さだと思います。妻を失った悲しみがあるにしても、新居の家具揃えはアレの意見を無視して一方的に決めてしまう一方、店のことは娘に一切話しません。一方、アレも生きていて元の家にいると電話でもすれば(海で携帯はなくしたにしても、他に方法はあると思います)、父もとんでもない凶行に走る事はなかったはずです。学校側もアレがいなくなってから騒ぎはじめますが、それ以前に担任が何らかの兆候を把握していても良かったと思います。イジメの原因はいろいろあっても、良い相談相手がいてコミュニケーションがとれていれば抑えることが出来ることを訴えていると感じました。

 

血の気の多いのがラテン男としても、父の暴走は余りにも短絡的で、描かれてはいませんが犯行がすぐにばれて逮捕されてしまうのは目に見えています。ホセを処分しても、周囲の悪ガキ共は残っていて解決にはなりません。首班のホセを殺すだけにせず、グループ全員を集めて責任追及をするだけに留めておけば良かったのにと思いました。とは言え、イジメ問題を単純にアクション的に描くのではなく、その背景や原因に鋭い目線を向けているという点ではまずまずの作品でした。