<ノルマンディー 将軍アイゼンハワーの決断

     (Ike:Countdown to D-Day2004)> ★★★☆

第二次世界大戦末期の1944年6月6日に決行された米英仏連合軍のノルマンディー上陸作戦、いわゆる“史上最大の作戦”の最高司令官を務めたアイゼンハワー、通称アイクの決断にいたるまでの苦悩や周囲との軋轢を描いていますが、戦争シーンは皆無でヒューマン・ドラマと言うべき作品でした。チャーチルやド・ゴールも実名で登場しますが、トム・セレックが演じるアイクを含めて私のイメージからすると瓜二つとは言えませんでした。アイゼンハワーはこの作戦で米英仏連合軍を勝利に導いてNATO軍最高司令官を経て第34代アメリカ大統領にまで昇り詰めています。



>1944年、ナチス・ドイツは戦況不利の中でもフランス全土を制圧して連合軍の侵攻を防いでいました。米英仏連合軍最高司令官に任命されたアイゼンハワーはチャーチル英首相、ド・ゴール亡命フランス政府首相、輝かしい戦歴を誇るモントゴメリーやパットン等の将軍との見解の相違に悩みながらもあくまでも勝利を目指して忍耐強い説得と巧みな根回しで、重大な決断をします。夜間の空挺(落下傘)部隊のドイツ軍背後への降下から始まり、上陸予定地への空襲と艦砲射撃、早朝からの上陸用舟艇により敵前上陸するというものですが、空挺部隊の生存率は30%と予測されて根強い反対論もありました。作戦は極秘裏に準備され、気象情報の綿密なチェックからドイツ軍が隙を見せるであろう悪天候の続く中の一瞬の晴れ間を突いて決行され、見事に成功してナチス・ドイツ崩壊の糸口となります。但し、この映画では戦闘シーンは一切なく、空挺部隊の戦死も2割で済み、作戦成功の報告を聞いて安堵するシーンで終わっていて、激しい戦争映画を期待すると肩透かしを食うことになります。

ヨーロッパ戦線における指導力や戦功からルーズヴェルト大統領の絶大な信頼を得て米英仏連合軍の最高司令官に任命されたものの、チャーチルやド・ゴールという一国のトップとの直接交渉やかつては上官だったり同僚だった将軍達との確執も描かれていて、苦悩しながらも勝利のためには適当に妥協しながらも最終的信念を貫こうとするアイゼンハワーの人間像はうまく描かれていましたが、チャーチルを始め周囲の人物の描き方はやや類型的で新鮮味はありませんでした。決死の空挺部隊の出発に際して自ら飛行場を訪ねて兵士達を鼓舞しますが、壇上で叱咤激励するのではなく、兵士達の輪の中に入って、兵士達に煙草の火をつけてやるなどして緊張を和らげてやるシーンは多分実話だろうと思いますが、彼の人間性をうまく表現してました。

全編を通じて戦闘シーンは皆無で、殆どが室内での会話でそのまま舞台劇としても通用するような構成で小粒感・チープ感は拭いきれませんでしたが、戦争ドラマとしてではなく、hy-マン・ドラマとして見ればそれなりに内容のある映画でした。

ただ、10年以上前の作品なので社会環境も違いますが、最初から最後までアイゼンハウワーもチャーチル(彼の葉巻はトレードマークですが)も並みいる将軍や兵士も煙草の吸いっぱなしで吸い殻はポンポン平気で投げ捨てていて、スクリーンいつも紫煙が煙っているようだったのが妙に気になりました。

ノルマンディー