<バーティカル・リミット(The Vertical Limit・米・2000)


バーティカル・リミット

私は学生時代に登山に凝っていたので、山岳映画は大好きでストーリーよりも風景を見たくて極力見るようにしていますが、この作品はCATVで初めて見ました。世タイトルは“極限の高度”というような意味のようで、界第二の高峰K2(8611m)の遭難事故を描いていますが、冒頭には数年前に訪れたアメリカのモニュメント・バレーでのロック・クライミングが出て来ます。ストーリーにはかなり不自然なところがあり、山に関心がなくパニック映画として見る観客から見れば、突っ込みどころ満載の作品ですが、私はエンド・クレディットによれば、K2でも実際にロケした他、モニュメント・バレーやニュージーランドのマウント・クックでも撮影したようで、その雄大な風景を見ているだけで十分楽しめました。


>モニュメント・バレーで登山家の父と共にロック・クライミングの練習中に起きた宙釣り事故で、息子のピーターは父の命令で下にいる父親の命綱を切って先頭にいる妹アニーと共に助かりましたが、アニーは兄を許すことが出来ず、ピーターは苦悩から山を離れて動物写真家となります。3年後、アニーは父親の夢を追って登山家となり、K2登頂隊に参加します。しかし、頂上アタック隊の著名登山家トム、山岳愛好家でスポンサーのヴォーン、アニーの3人は8000m付近で天候の急変で進路を失い、深いクレバスに閉じ込められてしまいます。数年前、ヴォーンのK2初挑戦に同行した妻を失い、その遺体を探し続けていて地理に詳しいモンゴメリーに救出隊長を依頼し、救出には積雪を爆破して除去するため、ニトログリセリンのボンベを3本携行します。事故を聞いて、たまたま近くで撮影中のピーターも駆けつけて救助隊に加わります。2人ずつ3組に分かれて捜索に向かいますが、途中で雪崩やニトロの爆発事故などもあり、3人が命を失います。しかし、その雪崩でヴォーンの妻の遺体が発見され、彼女はヴォーンが救急薬を独占したため命を失ったことを知ります。遭難した3人も希薄な空気と寒さのため、肺浸潤になり死が迫って来ますが、漸くモンゴメリー、ピーター、モニカの3人がクレバスの上に到着し、計画通りニトロを爆破して障碍となっている雪を除き、ピーターとモニカが支えるザイルを伝ってモンゴメリーが既に亡くなっているトムの遺体と瀕死のアニーの引き上げに成功します。最後に残ったヴォーンを引き上げる時、上では足場が崩れて2人は宙釣りになりますが、ヴォーンは頭上のザイルを切断してヴォーンと共に深い奈落に転落して行きます。山麓の病院でアニーは治療の結果、回復し、苦難を共にしたピーターとモニカは口づけを交わします。


数年前、中国雲南省の4000m級の山地の展望台へ観光に行った時も、麓で小型の酸素ボンベを駆って携帯しました。8000m級の高山の無酸素登山も試みられていますが、この映画では遭難した3人も救助隊も誰一人として酸素ボンベを携帯していないのは不用意というよりも不自然でした。又、登攀途中で、携行しているニトロが日光で温められると爆発する危険性があるとベースキャンプから連絡を受けて初めて知るというのも腑に落ちませんでした。それ以上に、ヘリコプターも行かれない8000mの高さで危篤のアニーを伴って全力を使い果たしたピーターとモニカがどうやってキャンプに戻ったのかは全く描かれておらず、妹が助かった代わりに4人もが命を落としているのに、父を死なせてしまって山を諦めた筈の男がそれほど苦悩しておらず、チューそているのはどういう神経なのかと後味の悪い終わり方でした。


でも、ストーリーはともかくとして、最初から最後まで合成やCGもあるにせよ、自然の猛威を振るう山の情景をたっぷり堪能出来て満足しました、