知ったかぶりな返事でお客様を激怒させた失敗談 | 失敗から学ぶ君のブログ

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営業一筋24年。数えきれない程の失敗や挫折を繰り返し、未だに失敗をしている中年オヤジです。今では畏れ多くも管理職を拝命させて頂いておりますが、組織運営も失敗の連続!そんな私が出会った本や失敗談、不思議体験や日々の出来事や感動した事をご紹介します!

今回は知ったかぶりをして曖昧な相槌でお客様を激怒させてしまった失敗談をお話します。
 
今からおよそ15年くらい前、世の中の女性が厚底ブーツなるものを履いて、彼氏よりも背を高く見せるアイテムなるものが流行した時代。
歌で言えば、福山雅治さんの桜坂が大ヒットして、世の男性がスナックのカラオケで福山さんの真似をし、目当ての女性の気を引いていた時代の話です。
 
業界でも、世界標準規格なるものを意識してか、各業界でISO(あいえすおー)の取得に躍起になっていた時代でした。
私の勤めていた会社も、東京のISO専門のコンサルタント会社とタッグを組んで、拡販に力を入れ始めた時期でもありました。
またまたハイカラな横文字の登場です。ハイカラさんもクリビツです。私もクリビツ。
 
ISOとは、インターナショナル何ちゃらの略語で、簡単に言うと世界を相手に自社製品を輸出したり、世界標準の品質管理などをマニュアルに沿ってガチガチに管理する、言わば日本のJIS規格の兄貴分みたいな感じのマネジメントシステム。
例えるなら、超束縛系のパートナーに1日中ガチガチに監視されてる様な感じとでも言いましょうか。
 
ISOをやるだけで社内に専門の部署を作らないとダメなくらい書類が多くなり、取得時の経費もかなり高額になります。
つまり、このISOと言う商品は、モノを売るのでは無く、ノウハウを売ると言う事なんですね。
だから粗利率も高く、社内でも力を入れたい商材なんです。
 
ちなみに私のテリトリーのお客様は世界品質とは縁の無い田舎だったので、ハナっから売るつもりも無かったのですが、社内勉強会なるものもありましたが、全く興味が湧かず、ぼーっと窓の外を眺めていたり、時には夢を見ている事もありました。
そうです。
人間は自分が興味の無い話には全くと言っていいほど無関心になるんです。
馬の耳に念仏です。
 
ところが、私のテリトリーでもISOを拡販しなさいと言う社内命令が下り、まして東京のコンサルタントの社長さん直々に同行訪問をするという計画を勝手に立てられていたのです。
私はヤバイ!と感じました。
社内勉強会を全く聞いていなかったせいで、全くISOの中身が分からなかったのです。
急いで地元のTSUTAYAさんへ駆け込み、ISOに関する書籍を購入しました。
 
仕方なくコンサルタントの社長さんを連れて、私のテリトリーを同行して周りました。
車に乗せた際、無知な自分を隠す為に、ワザとコンサルタントの社長さんの目に付く様な場所に、TSUTAYAさんで買ったISOの本を置いておきました。
「おっ!勉強してるね~!流石だね~!」なんて言われるのを期待して。
いまから思えばセコイ作戦でした。
しかし、コンサルタントの社長さんは、本を見つけるや否やこう言いました。
「その本、これから拡販する品質のISOじゃなくて環境のISOを説明した本だね」と。
私は「?」状態になりました。
そうなんです。ISOにも様々な種類が存在するんです。
私は全く今回の商材では無い環境のISOに関する書籍を購入していたんです。
もちろん車の中は静寂に包まれていました。
 
気をとり直して、いざお客様周りを開始しました。
案の定、お客様の反応はISOどころか、東京からわざわざ来てくれただけと言う理由で、お菓子や漬け物、玉露などを振る舞う貴族的扱いの待遇。
ISOどころかエイエイオー的な感じで過剰な接待していただく始末。
 
主要なお客様を片っ端から訪問し終える頃には、二人してお腹が一杯になっていました。
コンサルタントの社長さんがこう言いました。
「あなたのテリトリーは、あんまりISOの必要性は無いみたいですね。」と。
そりゃそうです。始めからわかりきっています!
競馬で例えれば、ナリタブライアンが絶対勝つ事と同じくらい鉄板な事実です!
 
しかも、私のテリトリーでは、やっとパソコンが流行り始めたエリアで、しかもEメールをまだ使えないお客様ばかりのテリトリー。
村で主催するパソコン教室には恥ずかしくて行きたく無いと言うプライドの高い社長さんが多く、私が若いからと言う理由で夜な夜なパソコンを指導しに行く位のレベルです。
報酬は夕飯でしたが。
しかも「パソコンを立ち上げて下さい。」と言うと、社長さんが重いデスクトップを持って立ち上がる始末。
 
また翌日、コンサルタントの社長さんと同行訪問。
たまたま社長さんでは無く、会社のNo.2的な専務さんや息子さんにお会いする場面が多くありました。
面白い事に、真剣に話を聞いてくれるんです。
親である社長さん達は会社の未来を深刻にあんまり考えていませんが、専務や二代目の若さん達は、案外しっかりと考えているんですね。
 
だってISO知ってたし。
まるでドラクエⅡで、ラーの鏡が沼地にあるのを攻略本を見ずに、自分で発見するかのごとく自身満々的な勢いで、コンサルタントの社長さんと同等レベルで話し込んでるんです。
 
やはり、時代を読んで先代を凌駕し、自分の力で生き残ろうと言う気概を感じます。
我々とは血筋が違います。
責任感が違うのです。
熱湯風呂に突き落とされても「熱ッ!」と言わず、「いい湯だねえ~!と痩せ我慢するくらい気概が違います。
熱いおでんの大根を無理やり口に入れられ火傷しても「まいう~❤︎」とか言っちゃうレベルです。
 
そんな中、私はやらかしました。
コンサルタントの社長さんが、ある会社の専務さんにISOの説明をしていると、その専務さんが東京まで行ってISOの講習会に参加してきたらしく、専門家タジタジのレベルでお話をし始めたのです。
 
私とコンサルタントの社長さんも感心するくらい熱心に学習されたのが分かるレベルの知識でした。
私は専務さんのお話を「はい、そうですよね!わかります!ハイハイハイ!」なんて本当は何も分からないのに、ワザと無知を隠す為に大げさに相槌を打っていたら、その専務さんが急にこう言い放ったんです。
「あんた、さっきからハイハイ言ってるけど本当に分かってんの!」と。
 
私はキョトンとなり、思わず「はい!わかります!」と言ってしまったんです。
コンサルタントの社長さんが明らかに「マズイっ!」と言う顔で私を見つめてきます。
そしたらその専務さんがこう言いました。
「じゃあISOって何の略語だよ!?」と。
 
私はとっさに答えました。
「イ、インターナショナル何ちゃらです。」と。
一瞬で場は凍りつき、その専務さんが激怒しながらこう言いました。
「これから売ろうとする商品の名前すらまともに知らない奴が良く営業できるなあっ!詐欺師みてーじゃねぇか!」と。
 
その後何を話したか記憶にありませんでした。
 
この失敗で学んだ事は、自分の価値観でマーケットを売れないものだと決め付け無い事。
何事も準備訓練を怠らない事。
知ったかぶりをしない事です。
お客様には気持ち良く喋っていただく事が大事で、営業マンは聞き役に徹する事が肝要なんですね。