現状の計画停電を見ていて一番歯がゆいのは、
「節電の努力が実っているのかどうか、よくわからない」
ということ。

確かに東京電力は
「みなさんの節電により、今日の第*グループ計画停電は回避されました」
と発表はするものの、非常に大雑把な内容にとどまっている。

※やっと東電から全体の電力使用状況が公表されるようになった。
電力の使用状況グラフ

そこで、提案。

・東電管内の「変電所単位」で毎日消費電力量、特に最大電力量を翌朝公表する
・夏の節電目標値を設定し、変電所ごとに毎日達成率を公表する

現在の計画停電グループ別変電所一覧

現在計画停電のグループ分けがされている変電所数は80ヶ所。対象外となっている都心を加えて100ヶ所を超える程度ではないかと推察する。この変電所単位であれば、消費電力量の把握は可能かと。

毎朝ニュースで
「昨日の節電目標達成率は全体で95%、達成率1位は埼玉県志木市、和光市などの属する第78グループ、逆に最下位は千葉県浦安市…」
などと発表されれば、自分たちがどれだけ節電に貢献してるかわかり、励みになるはず。

変電所の区割りと行政区分は細かいところでは一致しないところも多いだろうけど、達成率上位自治体にはご褒美として交付金を割増するのもよい。市町村長、地方議員が気合を入れて節電のPRに努めてくれるだろう。

[計画停電阻止の具体策 1]電力料金による調整

まずは、電力料金を調整することによる節電策について。
「節電のため電気料金を上げ、増収分を被災者支援に回そう」
という提案はネットのあちこちで見受けられる。

しかし、一日中節電をするというのは「電気を使うな」という意味でもあり、多くの人に長期間その状態を強いるのは無理がある。余っている夜間の電力を節約しても、肝心な「ピーク時の電力消費量を抑制する」ことにはつながらない。

スマートメーターが採用されていれば、「ピーク時の利用料だけを高くする」ことも可能だろうが、現状では無理。

ピークを抑えるためには、野口氏の記事でも提案があったように
「基本料金改定による契約アンペア数の切り下げ促進」
は非常に有効だ。

契約アンペア数とは、一時に利用出来る電力量上限となっており、これを超えた場合にブレーカーが落ちる。基本料金はこの契約アンペア数に連動しており、以下の通り。

10A: 273.00
15A: 409.50
20A: 546.00
30A: 819.00
40A: 1092.00
50A: 1365.00
60A: 1638.00

これを、6月以降については

10A: 273.00 現状まま
15A: 409.50 現状まま
20A: 546.00 現状まま
30A: 819.00 現状まま
40A: 1092.00→2184(2倍)
50A: 1365.00→4095(3倍)
60A: 1638.00→6552(4倍)

に変更する。これにより、40A以上の契約をしている人に30A以下に下げるインセンティブが強力に働く。特に30A以下に下げてもらった家庭に対しては抽選で豪華プレゼントを進呈する。計画停電を是が非でも阻止したい企業はたくさんあるから、すぐにプレゼントは集められる。

これで家庭ごとの最大消費可能電力量が抑えられ、結果としてピーク時の電力消費にも上限がかかる。いわば、首都圏大規模停電を避けるために、個別の家については時々ブレーカーが落ちてもしょうがないと納得してもらう策だ。

ブレーカーを落とさないために、電球をLEDにする、エアコンでなく扇風機で我慢するといった個別の節電対策にも力が入るはず。

もちろん大前氏が言うように、これによる増収は東京電力ではなく、税金として政府が徴収し、復興費用に回すのがよい。

まずはこの「家ごとの上限値を抑える」ことが大事。

これに、大前氏が提言している「過去3ヶ月の使用量を超えた分については、超過料金を取る」というアイデアを組み合わせてもいい。全体的に節電を意識してくれるようになる。

[計画停電阻止の具体策 2]休日輪番制

参考資料:
野口悠紀雄(ダイヤモンド・オンライン)
緊急提言:電力需要抑制のために価格メカニズムの活用を
緊急提言2:基本料金の見直しで、節電と利用平準化を進めよう


大前研一
地震発生から1週間 福島原発事故の現状と今後(大前研一ライブ579)
平日と土日を比較すると、当然のことながら、土日のほうが電力消費量が低い。となると、経済活動を休む休日を輪番制で平日にしてしまえば、平準化ができることになる。

このアイデアが一番「トンデモ」扱いを受けるだろう。しかし、効果も高いので、ぜひ検討していきたい。

話は非常にシンプルで、
「都県単位で休日を変える」
というもの。具体的には

都心7区:月火
他16区&都下:火水
神奈川県:日月
千葉県:水木
埼玉県:木金
群馬、栃木、茨城:土日
※都心7区=千代田、港、中央、渋谷、新宿、文京、豊島
とする。

東京都は経済規模もケタ違いに大きいので2分割し、北関東3県はひとまとめとした。

もちろん銀行のシステムなど土日に休んでバッチを回すようになっているところもあるだろうから、100%守ることはできない。しかし、少なくとも多くの大企業、行政、学校、そして大規模システムとは無関係の多くのサービス業・小売業には従ってもらいたい。

要は平日と休日のバランスをとることなので、上記分類はあくまで仮のもの。ちなみに大前氏は産業ごとの休日設定を提言している。個人的には地域分割のほうが納得感があるが、神奈川県に住み、東京都に通勤する場合など、「会社と家庭・学校の休日が異なる」ケースが一番悩ましい。

他によい分割案があったら、ぜひ教えて欲しい。

[計画停電阻止の具体策 3]時間ピークを抑える対策
重ねてになるが、東電が「電力供給をまかなえない」と言っているのは、あくまでピーク時のこと。夏場であっても深夜は電力消費が半減するので、充分対応可能。

なので、この「時間ピークを抑える」ことが、一番大事。そこを何とか平準することにより、1日トータルの電力消費量を変えずに(経済活動量はおおむね維持したまま)、ピーク時の最大電力量を減らすことを目的とする。

1.サマータイム制(2時間前倒し)+時差出勤制

東京の7-9月の日の出時刻

を見てもらえればわかるように、7-8月は午前4時半~5時に日の出となる。
そこで、サマータイム制を導入し、2時間時刻を前にずらす。
例えば、現在の午前9時-午後6時の就業時間が午前7時-午後4時となる。さらに時差出勤を組み合わせて

全体の3割:午前5時-午後2時
全体の5割:午前7時-午後4時
全体の2割:午前9時-午後6時
(時間は全てサマータイム導入しなかった時の時間)

とすれば、午後2-3時の電力ピーク時に少しでもオフィスの電力消費が抑えられることになる。おまけとして通勤ラッシュも平準化される。

サマータイム制は日本全体に導入し、時差出勤制は関東の大企業には義務化(中小企業は努力目標)、理由なく目標達成できなかった企業名を公表する。

日本以外の多くの国でサマータイムは導入されている。私もアメリカ、ニュージーランドで経験しているが、切替時に多少の混乱はあってもすぐ慣れる。通常は1時間のサマータイムを2時間にするので、切替時には寝不足の人が出るかもしれないが、いたしかたない。

2.夏の甲子園を秋に延期

よく電力ピークの時の象徴として「冷房をガンガン効かせたところで甲子園をTVで見る」という話がある。電力消費抑制策の象徴としても、この甲子園生中継を秋に延期することは効果が大きい。

「甲子園は関西で行われるのに、なぜ」
と思うかもしれないけれど、問題はそれを見る人がたくさん関東にもいる、という点だ。休み中でなければ開催できない、というのであれば

・秋に開催
・準々決勝までは土日ごとにブロック制(北海道東北、関東、中部、関西、中四国、九州沖縄)とする
・ブロック優勝校と2位のうち比較上位の2校がベスト8進出
・準々決勝、準決勝、決勝は週末2回を利用して甲子園で開催

とすれば解決する。

3.ピーク時民放TV局輪番停波

これは実質的な意味よりも、象徴的な意味で非常に大事。NHKを除く民放は曜日ごとに輪番で午後2時-午後6時(サマータイム導入前時間でいうと正午-午後4時)の間停波する。

月曜:日テレ
火曜:テレ朝
水曜:TBS
木曜:テレ東
金曜:フジ
#地デジ局番順

「節電のため停波しています」

とTV局が輪番で真っ黒な画面を映せば、それだけ「節電しなきゃ」という気にもなるはず。
#この時間帯は視聴率も高くないし、再放送や低予算生番組、TVショッピングでお茶を濁しているのだから、TV局としても納得可能なのでは?

また、停波していないTV局については「現在ヤシマ作戦決行中。不要不急のTVを切って少しでも貴重な電力の節約を」とのテロップを義務付け、節電の啓蒙に役立てる。

4.お昼休みエアコン停止の義務化
夏場の電力消費で一番大きいのは何といってもエアコン。これを抑えない限り、ピークの抑制はできない。昼休みの1時間についてはオフィスのエアコン停止を義務付ける。レストランなど飲食店・小売業・サービス業店舗は対象外とし、オフィスからのエアコン難民を受け入れる。

この項目はまだまだアイデアがありそうなので、後で追加していく予定。

[計画停電阻止の具体策 4]居住人口そのものを減らす
「人口を減らす」といっても、強制移住をさせるわけでなく、みんな順繰りに休み、休み中は関東を脱出してもらう、というプラン。

1.連続有給休暇2週間の強制取得
大企業に対し、7,8月の2ヶ月間で全ての従業員に対し2週間の連続有給休暇取得を義務づける。取得率9割に達しなかった企業については企業名を公表する。これにより、1日に働く従業員数は大企業で3/4に、中小企業分を合わせても全体の1割程度は減少するはず。

2.夏休みを2ヶ月に拡大
子供がいる家庭の有給休暇取得を促進するため、夏休みを7,8月の2ヶ月間に拡大する。代替授業は春や秋に補講ですませる。

3.関東脱出促進
ただ休むだけでなく、積極的に東京電力管外に出てもらうための対策をとる。「バカンスプラン」と銘打ち、2週間のパック商品を造成するよう旅行代理店に要請し、ホテル・旅館関連団体、JR等交通機関に協力を求める。特に東北地方の交通インフラがある程度復旧していれば、政府が「東北サポートバウチャー」として宿泊費の一部を補助する旅行券(一人1泊あたり1000円補助、最大1人あたり14,000円、4人家族なら56,000円!)を発行し、積極的に東北に行ってもらう。
#東京電力管内の観光協会・旅館組合が反発するのは眼に見えているが、「計画停電で集客できなくなるよりマシ」と観光庁より説得してもらう。

4.「電力疎開」促進
ネット環境が充実したことにより、東京でなくても仕事ができる人も増えているはず。2ヶ月間関東を離れて仕事をする「電力疎開」に対して中部以西の自治体がサポートし、例えば夏休み中の学校をオフィスとして開放する。家族全員が疎開する場合には移動費、引っ越し代を上限として補助金を出す。

[計画停電阻止の具体策 5]政府の役割

経済活動を停滞させる「計画停電」を阻止するため、政府、官公庁、地方公共団体が一体となって節電に務めるため、「関東節電対策本部」を設置する。

本部長には東京都知事選に落選した候補者の中から民間の発想で節電対策を推進できる人に就任してもらう。本部は以下の案件について各省と折衝し、実現する。

総務省:
・サマータイム制実施
・民放TV局輪番停波の指導

経済産業省:
・都県ごとの休日設定について、業界団体を通じて要請
・大企業に対する、2週間の有給休暇取得と時差出勤制の義務付け
・東京電力に対し、変電所ごとの消費電力量など詳細なデータ開示を要請

文部科学省:
・学校の夏休みを2ヶ月間に延長
・夏の甲子園を秋に延期

国土交通省・観光庁:
・旅行代理店に2週間の有給休暇にあてる「バカンスプラン」造成を要請
・宿泊業者、JR等交通機関に対しても同様の宿泊プラン、割引チケット造成を依頼

財務省:
・東京電力の基本料金と利用料の値上げ分を「復興特別加算税」として徴収、復興費用にあてる

都県:
・都県ごとの休日設定の周知徹底

市区町村:
・変電所ごとの節電目標達成を目指し、住民の啓蒙に務める